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Nineth Candy : 人の運命なんぞ。

なんで、知ってるの?キララが人間だってこと。今まで誰にもばれたこと無いのに。

 お糸は、キララの心を読んだかのように口を開いた。

「わしも人間じゃからじゃ。」

「うそ。」

「まことじゃ。」

 キララは、体を揺すってきいた。「どうやって、この世界で生きているの?ばれないの?輪人間の世界に帰れるの?」

「そう、質問攻めにされては、わしも頭が痛い。」と言ってあたりを見渡す。

「長い話になりそうじゃ。このように気味の悪いでは、ゆっくりと話もできん。お前、帚に乗れるのか?」

「ううん。どこに行くか分からないよ。」

「では、わしが飛ぼう。かせ。」と言って帚を掴む。キララはもまたがって、その女の腰に手をおいた。

 ダウンタウンを離れて、しばらく飛ぶと、最初に見た天女の木造が見えてきて、その足下に降りた。

「ここなら、誰にもきかれること無く、ゆっくり話せるじゃろう。」

「あなたは、だれ?」

「わしの名は、この世界ではお糸。人間の世界では、松倉菜花式部と呼ばれておった。おぬしは?」

「百怪ティナ。松本キララよ。」

「百怪家の娘か。どのようにして、百怪の一族になったのじゃ。」

 キララは、できる限り詳しく今までに起ったことについて話し始めた。

「なんと、能力交換術で。では、本物の百怪ティナはお前の世界にいるのか。」

「そういうことになるの。」

「家に帰りたいか?」

「うん、だってパパやママに会いたいもの。」キララは目が熱くなった。

「そうか。おぬしは近代の娘なのじゃな。わしは、今から千年前の平安に生きておった。」

「じゃあ、今まで生きて?」どうみても、千才のおばあさんというよりは、年頃、多分25歳前後だろう。

「そう、私は不老不死じゃ。永遠の魂を手に入れた変わりに、老いることも、死は許されない。」

「でも、どうやって。」

「あれは、いつ時だったか。わしが、22の時じゃった。わしの大切な一人息子が物の怪に取り憑かれた。わしは陰陽師に頼んで、物の怪を追い払ってもらおうとしたのじゃが、失敗に終わった。愛おしい息子の体から魂は持ち出された。わしは魂を取り返そうと、陰陽師に頼み込んだ。陰陽師は確かではないが、持ち去った鬼は、人間の魂を食らうと言う。だれであろうとわしの息子の魂を盗んだ者は許せなかった。私は、復讐心のあまり心が鬼になりかけていた。涙にくれて床に伏せていると、誰かが、戸を叩くではないか。開けてみると、誰もいない。そこには一冊の書物が置かれていた。開いてみると、そこにはおぞましきことがかいてあった。鬼の世界にゆく手段。100人の陰陽師の血を集めて煮詰め、飲むことで、鬼の世界にゆくことができると。神からの救いかもしれない、罠かもしれなかった。しかし、最愛の息子をうしなったわしにはこの世に未練は無かった。そして、わしは、貴族の娘から、花魁へと落ちぶれた。数多くの陰陽師をたぶらかし、寝取ったあとその寝ている裸の胸に小刀を突き立てた。そして、99人目の陰陽師をやった後、私は捕まってしまった。牢にとじこめられた。それでも、わしは、あきらめなかった。99人の血は集まった。最後の一人が立ち無くても鬼の世界に行けるに違いないと。わしは、血を飲み干した。なんと、扱ったことか。からだが炎のように熱く、息ができないほど苦しくなった。わしは、胸をかきむしり、呪いの言葉を吐いた。そして、目の前が真っ暗になった。

 気がつけば、びしょぬれになって、川原に横たわっておった。わしは、鬼の世界に来たと知った。息子をすぐにさがしたかったわ。しかし、わしは弱かった、最後の血が無かったためじゃった。それに、この世界のことを一つも知らない。わしは、必死じゃった。一番容姿の似ている魔女と名乗って、どうにか毎日毎日を切り抜いていた。しかし、死が体を蝕んで行くのが分かった。全てをかけて個々までたどり着いたのに、なんとうらめしいことか。そして、なんという神の悪戯か、わしは万国から届いたと言う杏武呂死亜アンブロシアと呼ばれる不老不死の薬を手に入れた。そして今までわしは、息子を捜すために、人間の魂の悲鳴を聞くたびに姿を現す続けた。」

 なんと言うことだろう、このひとはただ一つの思いを千年もの間、絶え間なく思い続けていたというのか。ずっと一人で。

「人間の世界に帰ったことは?」

「ない。」

「じゃあ、キララが家へ帰る方法は分からないままなのね。」

「ああ、すまぬ。しかし、わしと違うて、お前は能力交換術を使ってこの世界にやってきた。ならば逆の方法も存在するだろう。期待を持つのじゃ。」

「うん、そうする。それに、キララはこの世界嫌いじゃないもの。」

 お糸は、しばらくの間黙っていた。

「お糸さんは、どうして帚に乗ることができるの?」とキララは遠くの方で光を放つダウンタウンを見つめながら言った。

「魂はな、長く生きれば生きるほど、力を持つのじゃ。帚に乗れるほど、力を持ったのは最近の事なのじゃ。だから、おぬしは、運が良い。来た時から、力を持つことができたのじゃから。」

「そんなことないです。まだちゃんと飛べないし、どういう風に魔力が働くのかよくわからないもの。」

「考えるのじゃなくてな、感じでつかむのじゃ。そうすれば、すぐに使いこなせるようになるじゃろう。」

「はいっ。」

「そういえば、あそこの近くにあった小道に浮浪者みたいな人たちが沢山いたんだけど。」

「あそこはな、孤児、親を持たぬ者が集まる場所なのじゃ。噂によると悪魔の集会もあそこで圧ときいておる。」

「そうなんですか。」

 じゃあ、なんで、うららはあんなところにいたの?あんなところに住んでいるわけも無いし。

 キララとお糸はしばらくの間、色々話をした。

「そういえば、おぬし、家に帰らなくていいのか?」

 し、っしまった!門限!!

「うわ、どうしよう。ばあやに殺される。私帰ります!」

「送ろうか?」

「いえ、大丈夫です。なんだか、飛べるような気もするし。」

「そうか、では、お前に会えて」良かった。また、会える機会があるといいな。」

「はい、きっとまた会えます。」

 キララは、帚にまたがった、ちょっと大きいけど、感覚、感覚。キララは、帚が宙に浮かぶイメージを頭に思い浮かべた。ふっと足が地面からはなれて、ゆっくりと上昇し始めた。やった、うまくいった。キララは、お糸さんに手を振ると家の方角に向かって飛び始めた。



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