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eleventh Candy : 玉の輿

「ただいまっ!」

 キララは小学生らしく、元気よく最上階にある、自分の部屋の廊下に飛び込んだ。

「葵さん!」

 葵は、キララの部屋にきちんと座って、一度お辞儀をすると、真っすぐにキララに顔を向けた。その目は涙ぐんだようにうっすらと赤くなっている。

「どうしたの?」

「姫様、姫様。おめでとうございます。嬉しいお知らせでございます。詳しくはお父様のお口からおききになってください。」といって、小袖で目元を抑えている。

 パパが帰ってるんだ。キララは、葵につれられて、大座敷へと足を入れた。

「パパ!お帰りなさい!」と言って、ひらひられレースのついた純白のシャツの胸に飛び込む。

 パパは、キララの頬にキスをしながら言った。「キララ。見ない間にまた、美しいレディに近づいてきたな。」

 パパは、絶対に歳を取らない。少し年上のハンサムな男性。いつも中世ヨーロッパの服を着ている。180センチ以上はある長身にひらりとかかとまで長いマントを身にまとっている。血がつながってはいないとはいえ、キララの事をいつもレディと呼んでくれるのでお兄さんのように慕っていた。

 ママが「ちょっと、あまり父上にべっとりするんのではない。レディらしくもないぞ。」と言うと、パパは、キララをおろして真剣な顔をした。

「キララ、すばらしい話がある。」

「はい。」

「前にも話したことがあるだろう。帝の宮殿入りができるかどうか。」

「今日帝から、手紙があった。ぜひとも、お前に宮殿入りをしてほしいと。」

「それは。」とキララはいまいち理解できずに訪ねた。

「良いことだ。お前が、お世継ぎの妃に選ばれれば、お前に取ってすばらしいことなのだから。」とパパは顔をほころばせている。

 妃?王女様ってこと?

「なんだ、すっとんきょんな声を出して。そうだ、王女様。それで、沢山跡継ぎを作って、大家族を作ろう!」

 それって、結婚しろってことだよね?子供ってキララは、まだ小学生なのに。

「お世継ぎも、お前と同じぐらいの歳だったな。たしか。」 

「50歳位だったかしら。」とママが口を挟んだ?

 50歳っておじいさんじゃないか。



       *


「はい。確かに姫様は50歳でございます。」

 葵は、いつもの通りきちっと正座をして、くすくすと笑いながら言った。魔族は長生きなのだ、小学生は50年生きた位。ママは、250歳位。パパも同じ位生きている。さらに言えば、ばあやは1000年以上生きているらしい。いったい歳の分だけのろうそくを立てられるバースデーケーキってどんなんだろう?

「で、葵さんは何歳なの?」

「秘密でございますよ姫様。おなごの歳をきくのは失礼に当たりますよ。」

「いいじゃん、教えてくれたって。」

「姫様よりすこし年上でございます。」

「ところで、宮殿入りして何をするの?」とキララは、畳の上に仰向けに転がりながら言った。

「帝に気に入られるように勤めてください。」

「それって、誘惑しろってこと?」

「まあ、姫様。おませなことをおっしゃられる。一口に言えばそのようなことになります。」

 だけど、どうやってキララが好きになるかも分からない男の子に誘惑すれば良いの。というか、なんでキララがこんなことしなきゃいけないのかな?

「我が百怪家は、代々帝にお使えする家柄なのですが、ちょうどクリスティーナ様騒動でしばらくの間、宮殿使いを控えていたのでございます。しかし、今回帝直々にお手紙をいただき、我が家もまた元のように帝に使えることができそうなのでございます。」

「で、それがキララの腕にかかってるってことなのね。」

「そうでございます。」 

「で、クリスティーナ様騒動って何があったの?」とキララはあの自由方便なママの騒動については検討がついていたがきいてみた。

「実は私めもまだ生まれていなかったときでございますから、ばあや様から聞いたお話でございます。」

「うん。」

 がらっと、扉が開いて、ばあやが障子の前にちょこんと座っている。

「ここからの話は私がお話ししましょう。」

 やれやれ、この家の人間は暇人が多いようだ。だけど。キララは思った。それともこれが人間に取って程よいペースで、キララの世界が汗くさしすぎてるのかもしれない。

 ばあやは湯のみと甘菓子の盆を畳の上に置くと、いま葵が座っていた座布団の上に座った。

「あれは、ちょうどクリスティーナ様が姫様と同じ位のことでございました。いと美しく、ただ座っていれば葉のうえに溜まる白玉のように愛らしいお方でした」とばあやが語り始めた。

「しかし、お嬢様は白玉どころか、海のようなじゃじゃ馬でございました。」と遠い目をして、天井に目をやっている。

「今のような蛮人の名ではなく、お父様からは、琴葉というすばらしい名前だったのでございます。さて、我が家は、帝の側近としての勤めはもちろんのこと、強い権力を持っておりました。当然のことながら、帝の妃候補にクリスティーナ様が選ばれたのもとうぜんの事柄でございました。」

「当時は、まだ天皇家そして百怪家の血を次ぐ者がおらず、お父様はクリスティーナ様に大きな希望抱いておりました。宮廷上がりをしたクリスティーナ様はあのようなご容貌の美しい方ですから、すぐに帝に気に入られました。がしかし、家から離れたのがいけなかったのでしょうか、毎晩のようにお酒を飲み始められて、汚い言葉を履くようになったのでございます。それでも、帝のご寵愛は変わることなく、寛大に見ていただいてはいたのです。しかし、ある日とうとう、他の男を部屋に引っぱり込んで、それが帝の耳に入りました。」

 ばあやは、ふーっとため息をつくと話を続けた。

「帝は大変にお怒りになられ、クリスティーナ様は、宮殿から立ち退かなくてはなりませんでした。周りからの悪評やうわさ話がひどく、ある日姫様は、海外に留学にいってまいる。っと言って、家を出て行ってしまわれました。」

「そして、しばらくして、突然門の前に帰ってこられました。私はそれはそれは、嬉しくて服が乱れるのも気にせず、お出迎えに上がったのです。しかし、姫様の傍らにはどこぞの馬の皮とも知れない蛮人の男が一緒におりました。

 そして、姫様は、おっしゃられました。妾はこの男と結婚するぞよ。

 私は気が遠くなり、地面へとはたりと倒れてしまいました。その男こそが今のお父様のタジオ様にございます。」

 ママがそんな騒動を起こしてたんだ。いくら時が経ったとはいえ、まだ覚えてるよね。キララはプレッシャーを感じていた。ここで、なにか粗相をおかしたら死刑になるかも。

 お休みをいって葵達が部屋を去ると、キララは、一人考え事をしていた。宮殿に行ったら、学校には行けないんだよね。お乱やうらら達にもあえなくなるのかも。この世界で唯一のお友達なのにね。それもと宮殿に呼んで、自慢しても良いかも。

 跡継ぎはどんな人なんだろう。やっぱり、この世界を治めるだけの重さを克服できる人。きっと、ハンサムで頭が良くて、きりりとしているに違いない。キララ好みのハンサムだと良いんだけど。

 色々考え事があるような木がしたけど、キララのまぶたは既に重くなっていた。まあ、いいか、明日には明日の風が吹くだよね。

 

 その夜キララは、艶やかな着物に身を包み、キララの理想な男の横に座って、国を治めている夢絵を見た。



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