ハバケ・ガダナ・アンレイ
煮えたぎる灼熱のマグマ。見上げるも底のない曇天。
悪鬼羅刹が蔓延り、生きたし生きた罪人諸人が裁かれる場。
そうここは地獄。
「裁かれる準備はできましたか?神への祈りを捨て、自分の徳の低さに憤りましたか?それでは、開廷しましょう。ここは地獄。生きる時間はありませんが、死に続く時間は沢山あります。さぁ、罪人よ。己の罪を告白しなさい」
「閻魔様、私は十五名の戦士を戦場にて殺めました。ですが、あれは私の本意ではありませんでした。それにやらなければ私が彼らにやられていたのです。幾人もの人生を見てきた貴方様にはお分かりになることでしょう。戦争とはどれほど残酷で不条理か。私はその戦場に全てを蝕まれた被害者なのです」
「ほう、自ら罪を告白したかと思えば、そのようなことを宣うとは。ではあなたは自分に罪がないというのですか?」
「いえ、もちろんあります。15人の命を奪ったのは紛れもなく私でございます。しかし、針地獄や焦土地獄に向かわされるのは少しばかり理不尽ではありませんか?本意では、本意ではなかったのです!」
「本意でなかった故に減刑してほしいと……ほう、しかし、あなたは現世で15人殺したことを鼻にかけ、仲間に自慢して回りましたね?それから簡単なことであったとも言いましたね?」
「あぁ、違うのです違うのです!」
「何が違うというのですか」
「あの時はあぁでも言っていなければ平静を保てなかったのです。殺生することを深く考えれば、人は壊れてしまいます」
「そうですか。しかし平静を保つために人の命を軽く考えていたあなたが前世では殺した人の人数を15人ではなく30人と倍に数えていましたね」
「あぁ……それは…」
「ーーでは、あなたのその考えに則って差し上げましょう。本意ではなかったあなたへの幾分かの譲歩です」
「え?」
「人1人の命の重さを2人分と考えるあなたには私も反省の色が見られましたので、『本意ではなく30人殺した罪人』として私はあなたを裁きます」
「それは違ーー
「ではあなたを人の命の重さを倍に考える慈悲深さと『30人』殺したという罪状をもって」
「お、お慈ーー
「八つ裂き地獄を30万年、私も敬意を払って期間を倍にしてみました。あなたが譲歩してほしいと言われましたので、本意ではないのですがね」
「そんな!あんまりです!再審を!再考を!」
「獄卒よ、そのものを連れて行きなさい」
「離せェ!や、やめてくれぇぇぇええ!」
「閻魔に裁かれる時点で、あなたの罪が消えることはないと、肝に銘じておくように」




