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剣の谷の狙撃手  作者: キャップ
第二章 秋津洲
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秋津洲

「専門家曰く台風に巻き込まれて沈没したのではないかいう話だったかな。100年以上前の話らしいが詳しくは覚えていない。たしか漂流物が何ひとつ見つからなかったせいで妙な話になってしまったらしい」




「普通沈没したなら何かしらの漂流物は見つかりますからね」




「そう言うことだな」





国友はカップに手を伸ばそうとそちらに目をやった。しかしすでにカップが空になっていることに気が付き、手を引っ込める。代わりに広がっていた畑根の地図に手を伸ばした。




折り畳まれていた地図を広げる。地図上には現在判明している敵情や中隊の配置が、丁寧な文字や歪みのない記号で事細かく色分けして記されていた。





几帳面さが良く現れている。「指揮官には有能な怠け者を、副官には有能な働き者を」という言葉を思い出した。




念のためといくつか質問をしてみるが、何を聞いてもその場で思い付いたような答えが返ってくることはない。考えが良く練り込まれている証拠だ。




「確かに彼は優秀だったが・・・どうも面倒くさがりなところがあったな」




国友は微かに鼻を鳴らした。




「何かおっしゃいましたか?」




「いや、何でもない」




国友は座ったまま上体を捻って手を伸ばし、机の端に寄せていたA3サイズの茶封筒に手を伸ばした。その口はしっかりと封印によって閉じられている。




「話が脱線してしまって申し訳ない。とにかく今は再度目を広げて敵機械化連隊の存在とその位置について調べるのが最優先だ。行方不明中の狙撃手2名の行方も気になるが、残念ながらそちらを優先するわけにはいかない」




「承知しています」




畑根は差し出された茶封筒を受け取った。




「伝えていた通り、中身は明日・・・ではなく今日だな。0700以降に開く連隊会議で使用する作戦資料だ。熟読しろとは言わないが仮眠後にでも小一時間程度目を通しておいてくれ」




畑根は指で端を摘まんで厚さを測った。用紙20枚程だろうか。恐らく数枚は写真資料だろう。




最近では情報をロシア側に盗まれる事を避けるため、その書類の秘匿度によってはメールでの送受信が禁止される様になっていた。









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