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剣の谷の狙撃手  作者: キャップ
第二章 秋津洲
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秋津洲

無能扱いされるのはごめんだったから必要であれば励んだ。それが功を成したか、裏でどう思われているかはともかく、「仕事ができない」という自分の評価を直接にしろ陰口にしろ聞いたことはなかった。




仕事を面倒だと感じたことは数え切れないほどにある。むしろそう感じなかった仕事のほうがはるかに少ないだろう。当然の事ではあるが、皮肉な事に戦争が始まったことでこれまでの訓練の意味が肯定された。




終戦後、何千何万という自衛官が迷彩服を脱ぐことになるだろう。そして生きて終戦を迎えることができたならば、俺は間違いなくその中に入る。今度こそだ。




自衛官としての俺の仕事は全て終わった。今後永遠に銃を手にすることはない。




足りない頭のCPUはもはや限界だった。笑うべきなのか泣くべきなのか。喜ぶべきなのか怒るべきなのか。どれを選ぶべきなのかすらまるで分らない。




パソコンのように再起動してどうにかなるならさっさと強制終了してしまいたいところだが、残念ながらそれすらも許されない。




眠ることができれば少しは頭の整理にもなったかもしれないが、恐らく数日間眠っていたであろう今の俺にはそれも難しい。




一度自衛隊を去ることを本気で考えていた時と一緒だ。何もかもが面倒になり、どうにかなるだろうと思考することを辞めたあの時と。




俺は何も変わっていない。これだけのことを経験していながら、未だに変わることができないのだ。




このまま俺は一生変わることはないのだろう。そしてそれも俺らしい人生の終わり方だ。


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