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剣の谷の狙撃手  作者: キャップ
第一章 狙撃手
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狙撃手

こちらができるのは監視と後方から送り込まれる砲弾の誘導、そして狙撃による敵歩兵への嫌がらせくらいだ。そしてそれができる時間は決して長くはない。




だが敵は違う。機械化斥候である敵小隊が我の防御部隊主力に対して殲滅目的の戦闘を仕掛けてくることはないだろうが、この地域の「目」である俺達2人を発見したならば話は別だ。現在持ちうるあらゆる火力をもってこの地域から排除しようとするだろう。昨夜のような砲撃を範囲を広げて徹底的に行い、集落周辺の消毒を行うはずだ。




ベトナム戦争時、アメリカ軍はそのような手段を用いて敵狙撃手の駆逐を行った。ベトナムのような森林地帯を歩兵が突破するには狙撃手の排除は必要不可欠だったのだが、姿の見えない敵兵の存在は恐ろしく厄介なものだった。少数の、もしかしたら既に逃亡したかも分からない狙撃手に対してそのような非効率的な対処を行うしかなかったのだ。




対抗狙撃手を放つという手もあるが、完全な偽装を施した狙撃手を発見することは熟練の狙撃手であっても容易ではない。俺と剣崎が見つかっている可能性は100パーセントありえないとは断言できないが、見つかっていない可能性の方がはるかに高い。




ロシア側も自衛隊主力との戦闘の前に無駄な弾薬や人員の損耗は極力避けたいはずだ。「察知されている」ならば、歩兵を展開し索敵殲滅、「発見されている」ならば火砲や狙撃手からの手痛いプレゼントが配達される。2つに1つだ。




敵がどのような行動をとるにせよ、この地域は放棄せねばならない。こちらが1発の銃弾、1発の砲弾でも見舞ったなら、敵の行動は確実に麻痺するが、同時にこの地域にはいられなくなる。後方に設けた別の陣地に張り付き、それを繰り返す。下がるべき退路がなくなった時はすなわち敵とこの地方を守る陸上自衛隊の最前線である、我の主力が戦闘を始める時だ。




既に日本海の制海権は奪われ、国土上空の制空権も安全とは言えない状態といったところだ。敵戦力を損耗させることができずにこれ以上航空機を飛ばされ、対空兵器を設置されたならば今度は空までをも取られてしまう。陸海空の総合的な戦略や戦術について専門的な知識があるわけではないが、それが決して許されるべき状況ではないことは俺でも分かる。

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