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剣の谷の狙撃手  作者: キャップ
第一章 狙撃手
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狙撃手

今だに着陸地域、そしてさらにもっと近くでも交戦が始まっているようだった。陽動に合わせた行動だとしたらなおさら腑に落ちない。きっとほんの少しだけ下がったか、もしくは身を屈めてタイミングを窺っているのかもしれない。




だとすればいつ敵が飛び出してきてもおかしくはない。倍率はそのままに切れ目から約30メートル先を照準した。




切れ目からこちらが敵を視認できなくなるジェット機の格納庫までは約80メートル。駆け足で走り抜けようとする敵に対しては低倍率のほうが対処がしやすい。




その瞬間を捉えるべく、俺はボルトを数センチ引き、薬室の中へ人差し指を突っ込んだ。空砲の固く、冷たい金属の感触を指先で感じ、ボルトを閉鎖する。そのまま親指で安全装置を安全位置である「S」から射撃位置の「F」に切り替えた。




必ず来る。時間はかからない。今すぐにでも敵は現れる。神経を研ぎ澄ませた。




「カゲ」と観測手が言ったような気がしたが、それすらもぼそぼそという独り言としか認識できなかった。再び大きく息を吸い、そして吐き出した。




呼吸に合わせて視界が揺れる。いつの間にか寒さは忘れていた。




再び名を呼ばれた気がした。低い姿勢の白影が藪から飛び出してきたのは全くの同時だった。




2人目は先頭の2メートル程度後方を追従している。間隔が近すぎると感じた。しかし屈んだ姿勢のせいかその速度は思っていたよりも遅い。余計な考えをすべて頭から排除しようとした。




「カゲ・・・カゲ」




不快な男からの呼びかけに一瞬いらつきが湧き上がる。それを押し殺し、大きく深呼吸をした。




照準は切れ目から格納庫までを結ぶ30メートルの一点を保っていた。しかしこのままではレーザーが敵の頭上を通過してしまうと感じ、ほんの数ミリ銃床持ち上げ、銃身を押し下げた。




影は吸い込まれるようにその一点へと向かっていく。引き金に指を這わせ、その瞬間に備えた。レーザーである以上偏差を計算する必要はない。重なった瞬間に引き金を引けばいい。




あっという間だった。先頭の影がレティクルのラインとラインを繋ぐ十字と重なった。限界まで落とした引き金張力をわずかに感じながら、指に小さな力を込めた。シアが外れ、解放された撃針が雷管を一気に貫く。

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