3服を新調する理由
次の日、私は河合さんとランチするために外出する支度をしていた。基本的に土日祝日の休日は、どこかに出掛ける時以外は化粧をすることはない。一日ぶりの化粧である。
「さすがにそろそろ私服を新調したほうがいいよなあ」
化粧をして部屋着から着替えようとしたとき、自分の私服事情にため息が出た。
私は自ら外出することが好きではない。旅行自体は嫌いではないが、計画するのは面倒くさいと思うタイプだ。友達も皆無なので、旅行と言えば家族が計画したものに乗っかる形で行くか、学校行事の修学旅行にしか行ったことがない。あとは、大鷹さんくらいだ。
旅行に行ったら、大抵写真を撮るだろう。そのため、出来る限りオシャレしたいものだ。しかし、最近旅行に出掛けないので服を新しく買う理由がなかった。そしてそのままずるずると月日が経過してしまった。仕事は銀行で支給された制服があって私服を気にする必要はない。仕事の行き帰りは、家と会社の往復か買い物くらいなのでおしゃれするほどではない。
つまり、新しい服を買っていない。
今日、河合さんと休日に会うということで初めて、自分の私服状況のやばさに気づいた。とはいえ、河合さんは私のダメさ加減を知っているので気にしなくていいのかもしれない。いや、気にする気にしない以前に新しく新調した服がないのだから、あるものを着ていくしかない。
仕方ないので、長そでの千鳥柄の長袖のブラウスにベージュのワイドパンツというTシャツ、ジーパンよりはましな格好で河合さんと会う事にした。ちなみに新調しなくてはいけないのは服だけではない。靴もカバンも新しいオシャレなものはない。
スニーカーに肩掛けバックをもって家を出た。天気はどんよりとした曇りで、雨ではなかったが、せっかく外に出たのに残念な天気だ。
昨日の夕方にようやく河合さんから連絡がきた。もしかしたら、ランチの話は河合さんの冗談だったのかとやきもきしていたので、連絡がきたときは心底ほっとした。
『明日のランチですけど、いくつか候補を出しておきました』
メッセージとともに、お店のURLが張り付けられたものが届いた。やはり彼女は今時の若者である。私の知らないオシャレなお店が並んでいた。
『こことかどうですか?椅子がソファで座り心地よさそうだし、店内が広そうで長く話せそうですよね?駐車場もありますよ。何回か行ったことがあるんですがおすすめです』
候補の中の一つが河合さんのおススメらしい。私にお店を選ぶセンスがあるとは思えない。河合さんおすすめのランチの店のURLをクリックして確認してみる。
確かに内装は彼女の言った通り、ソファが合って広そうだった。メニューも値段が良心的でおいしそうだ。
『河合さんがおすすめならそれでいいよ。何時からにする?』
私が返信すると、すぐに返事がきた。どうやら、河合さんはGW中だというのに、私に返信する暇があるらしい。
『では、11時にネットで予約を入れておきます』
目的地には11時5分前に到着した。駐車場はGWということもあって混みあっていたが、停められないほどではなかった。河合さんが到着しているか確認する方法は簡単だ。ピンクの派手な色の車を探せばよい。
「相変わらず、目に痛いショッキングピンク……」
仕事で使う駐車場で止まっている光景は見慣れてしまったが、他の駐車場で改めてみると、目立つ色である。
「先輩!こっちですよ!」
車に目をむけていたが、河合さんは既にカフェの入り口で私を待っていた。車だけでなく、彼女の今日の服装もショッピングピンクのワンピースだった。




