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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 もしも違う形で出会っていたら
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番外編 もしも違う形で出会っていたら③

 こうして連絡先を交換した私たちだったが、連絡をするのはもっぱら大鷹君からだった。私はそれに返信するという形で交流は続いていた。


「先輩、そのっカバンについている缶バッチって」

「ああ、これ?今はやりの刀剣の擬人化のキャラクターだよ。ゲームがあってそこからグッズとか色々出ていて……」


「いいですね。僕もやってみようかな」


 朝や帰りの通学途中で出会うと一緒に話す仲にまで発展した。今はお互いの趣味などを話せる仲にまでなった。


「大鷹君って、弟がいるんだよね。どんな感じなの?」

「弟ですか?ううん、あんまり僕と似ていませんが」


 大鷹君には一つ下の弟がいるらしい。そして、私は今、兄弟物のBLにはまっていた。現実に当てはめるのは良くないと思ったが、大鷹君ほどのイケメンなら妄想するのも悪くない。


「兄×弟……。インテリ系真面目兄×不良チャラい弟……」

「それ、口から出たらまずいワードですよね……」


 大鷹君は私が腐女子だということを知っても、私から離れていくことは無かった。腐女子以前に、わたしは友達というものがいないので腐女子だと打ち明ける相手はいない。しかし、普通はそんな趣味をもつ女性を敬遠するものではなかろうか。普通の高校生活を送ったことがないボッチ女子高生の私には想像することしかできないが。


「大鷹君は、彼女は作らないんですか?」

「先輩は僕に彼女を作ってほしいんですか?」


「どちらかというと、彼氏がいいかなって思います」

「はあ」


 大きな溜息をつかれてしまった。弟との絡みアリだが、他はどうだろうか。とはいえ、大鷹君の存在感がすごいので、そこら辺のモブ高校生とくっつくのもどうかと思う。


「僕は先輩のことが好きなんですけど」

「……」


 通学帰りの電車でこの話題はとてつもなく破廉恥である。そもそも、どうしてわたしなのか。一度倒れたところを助けただけの先輩を好きになる理由がわからない。


「とりあえず、先輩おすすめのゲームはやってみます」


 なんとなく、大鷹君が私に好意を寄せていることはわかっていた。私は二次元でよくある鈍感系主人公ではない。自分に向けられる他人からの感情はある程度、把握している。


「さて、どうやって断ろうか」


 これは断る以外の選択肢は無い。そもそも、私は高校三年生で春からは大学生になる予定で家から離れてひとり暮らしをする可能性もある。そんな遠恋の可能性のある年上の彼女を作るメリットが大鷹君にはない。


(私に遠恋してでも一緒に居たいというメリットがあれば)


 あればなんだというのだ。大鷹君と一緒に居る時間が心地よくて情に流されてしまったのか。大鷹君が降りた後の電車の中で、私は後輩の告白の返事を悩んでいた。そして、まさかの家の最寄り駅を通過して、反対の電車に乗って戻る羽目になった。



「いい天気になってよかったですね」

「まあ、ソウデスネ」


 夏休みになり、私たちは電車で行ける範囲にあったゲームのコラボカフェに来ていた。告白されてからはなんとなく大鷹君と会うのが気まずくなって、電車の時間をずらしたり、目が合っても避けたりしていたので、実際に面と向かって会うのは久しぶりだった。受験生なのに遊んでいることに対しては無視してもらいたい。たまには息抜きも必要なのだ。


「先輩が教えてくれたゲーム、面白いですね。丁度タイミングよくコラボカフェがあってうれしいです」

「大鷹君ってさ、おかしいよね」


 大鷹君は嬉しそうに私の隣ではしゃいでいる。こうしてみると、年相応な子供っぽい面が見えてくる。


「告白の返事は今日の終わりに聞きますね」

「私に何を求めているんですか?」


「秘密です」


 これではまるでデートのようではないか。いや実際に大鷹君はデートのつもりで私を誘ったのだろう。コラボカフェのメニューとグッズに引かれてつい、一緒に行くと言ってしまった。


「まあご飯を食べようと約束していたから、これはセーフか」


 連絡先を交換したときに、一緒にごはんを食べようと話していたことを思い出す。それが今、達成されているのだ。そう考えれば、まだ納得がいく。



「大鷹君、まだ食べられそう?」

「ちょっと無理です」

「ざんねん。私もギブ」


 コラボカフェのメニューはそれぞれの刀剣の擬人化キャラクターをモチーフにしたものが多数取り揃えられていた。キャラクターの髪色や瞳の色に合わせた飲み物やキャラクターの好きな食べ物があり、目で楽しむことも出来た。メニューの数に応じてランダムに配布されるコースターもデフォルメされたキャラになっていてとても可愛らしい。店内も刀剣のキャラクターのポスターが飾られていて、いつまでいても飽きない設計になっていた。


 私は大鷹君とコラボカフェを満喫した。一緒の趣味の人が周りにいないボッチの私にとって大鷹君はとても貴重な人間だ。今の時代、SNSを使って同じ趣味の人間を探せばという人もいるが、私のコミュ障具合では難しい。


「ごちそうさまでした」


 二人での写真もたくさんとった。中にはツーショットで取ったものもある。これは家族以外の人間には見せられない。見せたら最後、私の命が危うい気がする。


「今日は楽しかったです」

「わ、私も」


 ちゅ。


 今日はコラボカフェを一緒に行くという予定だったので、午後には別れる予定だった。しかし、このまま帰るのはなんだかもったいない気がした。コラボカフェを出て駅まで歩いている最中、どうしようかと考えていたら、突然、頬に温かい感触がした。隣を見ると、満足そうな大鷹君の顔がある。慌てて頬を触ってみると、なんだか生暖かい。これはもしや。


「き、ききききき、す」

「僕はこういう気持ちで先輩と一緒に居たいということです」


「むむむむむむ、無理です!」

「どうしてですか?大学で離れるというのなら、そこは心配いりません。たとえ遠恋になったとしても、僕は平気です」


 どうしてこうなったのだろうか。イケメンの後輩に詰め寄られること自体は嫌ではない。嫌ではないが。


「わ、わたし、腐女子だし、コミュ障で引きこもり気味で友達いないけど」

「この3か月くらいでよくわかりました」


「実は生身の男の人って苦手で」

「なんとなく見ていればわかります」


「大鷹君は弟とくっつけばいいと思うんだけど」

「それは嫌です」


 何を言っても、大鷹君の決意を揺るがすことはできないらしい。私としてはイケメンハイスペック男子と付き合えるのでメリットは大きい。大鷹君が私と付き合うメリットは何だろうか。


「僕、実は女性のことが苦手になっていて」

「はあ」


「母さん、いや千沙さんという叔母がいまして……。それと僕の容姿を見て告白してくる女性も多くいて……」


 なるほど、イケメンはイケメンなりに問題を抱えているのか。しかし、そうなると私と付き合うメリットとは。


「女性よけですか?」

「女性よけ?」


 なぜここで首を傾げられるのか。これでは本当に純粋に私のことが好きみたいではないか。


「それで、答えはでましたか?」

「ううううう」


 私としては、大鷹君を嫌う要素がないから困っているのだ。私の趣味や性格を理解してもなお、好きでいてくれる。そんな理想的な相手が今後現れるだろうか。いや、現れないだろう。そもそもが、コミュ障の引きこもりなのだ。出会いがない。


「よ、よろしくお願いします」

「はい、末永くよろしくお願いします」


 高校生で末永くという言葉が出るなんて。まあ、付き合うのなら長いほうがいい。


 こうして私たちは付き合うことになった。まさか、この後このまま結婚至るとはこの時は思いもしなかった。

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