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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 もしも違う形で出会っていたら
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番外編 もしも違う形で出会っていたら②

 こうして、私の高校三年生のGWは勉強三昧で終わった。後半は男子生徒のせいであまり勉強に集中できなかった気がするが、そういうこともあるだろう。


 GW明けも受験勉強は当然、しなくてはならない。通常の授業が終わると、希望者のみ、補習授業を受けることが出来る。苦手な教科やもっと点数を伸ばしたい教科などを受講する生徒が多い。私は数学が苦手なので、数学を受講することにした。


「倉敷先輩」


 連休明けから始まった補習授業は生徒の下校時刻ぎりぎりまで行われた。部活動が終わる時間が被るため、教室から出て玄関に向かうと、部活動を終えた生徒の集団と鉢合わせてしまう。部活動を辞めた身としては、そんな集団に絡まれるのは面倒である。


 そそくさとその場を通り抜けてようやく校門というところで声をかけられる。校門近くには私の勉強の邪魔をした男子生徒が立っていた。


「先輩は電車通学ですか?」

「まあね。大鷹君は?」


 もしかして、私を待ち伏せしていたのかと焦ったが、さすがにそれはなかった。友達を待っていたらしいが、私を見つけて私と帰ることを優先したらしい。


(優先?それはおかしくないか)


 一度、倒れていたところを助けただけにしては、ずいぶん私に執着している。大鷹君も電車通学ということで、私たちは駅までの道のりを並んで歩く。私たちの周りには下校途中の生徒がたくさんいる。そんな中、私と大鷹君が一緒に帰っていることが不思議だった。


「先輩、僕の名前知っているんですか?」

「この前、女の子が大鷹君って呼んでいたから」


「そうですか……」


 大鷹君は残念そうに溜息を吐くが、すぐに気を取り直して自己紹介を始めた。


大鷹攻おおたかおさむ16歳です。先輩と同じ高校で一年八組です。部活は陸上部で短距離が専門です」


 一年生で陸上部。もし、私が三年間部活を続けていたら一緒に練習できたのか。私は中長距離専門で接点はあまりなかったが、今よりは話す機会があっただろう。こんなまじめな後輩が入ってくるとわかっていたら、部活を続けていた……かもしれない。


 歩いているうちに最寄り駅に到着する。大鷹君はどちら方面に住んでいるのだろうか。一緒の方面に帰るのだったら、もう少し話すことが出来る。一緒に帰るクラスメイトがいなかったので、後輩とはいえ誰かと一緒に帰るという体験が新鮮だった。


「僕はこっち方面ですが、先輩は」

「わ、私も同じだよ」


 これは運命かもしれない。まさか帰る方面が一緒になるとは。



「大鷹君!久しぶり。やっぱり大鷹君って頭いいんだねえ。今も陸上続けてるの?」

「大鷹っち、中学ぶりだねえ」

「大鷹、ひとりなら一緒に帰ろう!」


 運命かと思ったが、どうやら違ったみたいだ。大鷹君のような男を周りが見逃すはずがなかった。電車が来るまで駅のホームのベンチに座って待っていたら、大鷹君は部活の知り合いや中学の同級生、クラスメイトらしき人物に次々と声をかけられていた。私と違ってずいぶんと人気者のようだ。


「隣に私もいますけど……」


 こういう場合、隣に座っている人物が気になるはずだ。しかし、まるで大鷹君の隣には誰もいないという前提で話が進められていく。隣に座っているのは大鷹君と赤の他人で無視しても良いと思っているのだろう。


(一応、他のベンチが空いているから、他人ってことは無いんだよね)


 ホームのベンチはいくつか設置されているが、他のベンチには誰も座っていない。わざわざ他が空いているのに他人が座っているベンチの隣に腰掛ける人はいない。それなのに、私を無視してくる彼らはかなり無神経な奴らのようだ。


「ぼ、僕はせ、先輩と帰るから、また今度にして」

『まもなく、一番列車が到着します。黄色い線の内側にお並びください』


 大鷹君が声を発したのと同時に、駅のアナウンスが電車の到着を告げた。大鷹君は声をかけてきた奴らを選ぶことなく、私を選んだ。


「ちょっと」


「おい、そいつだれだよ。もしかして彼女?」

「先輩って言ってるけど、まさか大鷹君って年上趣味?」

「趣味悪いなあ」


「僕は先輩の彼氏になりたいと、思ってる」


 私の腕をつかんで立ちあがった大鷹君は、彼らを一睨みするとそのまま電車に向かって歩きだす。爆弾発言をかましていたが、それは私にもクリーンヒットした。大鷹君の発言にダメージを受けた彼らはその場に立ち尽くしていた。



「さっきはすいません」

「い、いやいや、私の存在感が薄いのが原因だから謝らないで」


 電車内は帰宅ラッシュを迎えて混みあっていた。当然、席は満員でドアの近くに立ちながら私たちは話していた。


「いいえ、彼らは先輩を明らかにバカにしていました。それが許せません」

「はははは」


「先輩、お詫びと言ってはあれですが、今度一緒にご飯でも食べに行きませんか?」


 今時の男子高校生はこんなに軽いものだろうか。高校三年間で放課後に誰かと一緒に帰宅したこともなければ、誰かと休日に遊んだこともない。そんな私に初めて声をかけてくれたのが後輩の男子生徒になろうとは。


「それで、良ければ連絡先を交換、しませんか?」


 明らかに女子にモテモテで、こんな些細なやり取りだって何度もしているだろうモテ男は、なぜか恥ずかしそうに頬を赤らめている。後輩とはいえ、相手は男子高校生。身長は私より高いがなんだかかわいく思えた。


「べ、別にいいけど」


 こんな破壊力抜群の後輩の言葉に逆らえるわけがない。私はロボットのようなカクカクした動きでカバンからスマホを取り出し、大鷹君と連作先を交換した。すっかり、大鷹君から告白まがいのことを言われたことは忘れていた。



「では、僕はこの駅で降ります。さようなら」

「さ、さようなら」


 その後、10分ほどで大鷹君が電車から降りて行った。その間に交わした会話を私はほとんど覚えていない。まさか、高校三年生になって初めて男子と連絡先を交換することになるとは。そのことで頭がいっぱいで、大鷹君は上の空の私を見てあきれたかもしれない。


「ただいま」

「おかえり」


 慣れないことをした(男子高校生の後輩と一緒に帰る)せいで、精神的にとても疲れてしまった。家に帰ると、玄関で靴を脱いだ途端に廊下に崩れ落ちる。母親がリビングからでて出迎えてくれたが、私の疲労困憊具合に驚いていた。


「ちょっと、疲れただけ。すぐに着替えてくる」

「そう、それならいいけど」


 私はのろのろと起き上がると、二階の自分の部屋まで歩いていく。部屋で着替えをしていると、スマホが振動して連絡がきたことを伝えてくる。しかし、私に来る連絡などダイレクトメールくらいしかない。


 つい先ほど連絡先を交換した後輩からかもしれないのに、私はスマホを部屋に残し、夕食を取るためにリビングに向かった。

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