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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 運動します!(健全)
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3ただの散歩です

 母親に運動と一緒に勧められた散歩も休日に欠かさず行っている。実家は歩いてすぐのところに公園がある。ちょっとした山のようになっている公園で、散歩を楽しむ高齢者も多い。両親はその公園を利用して散歩している。


 私の家の近くには散歩するのに適した公園がなかった。とはいえ、せっかく運動を始めたのだから、ついでに歩く習慣もつけておきたい。歩くのは健康に良いと聞くので実践して行きたいと思っていた。



「今日から休日は隣町の公園まで歩くことにしました」


 アプリを入れた週の土曜日。私は大鷹さんに歩く宣言をした。近いとは言えないが、徒歩圏内に公園があったことを思い出し、そこを散歩コースに設定することにした。家を出る支度を終えて玄関で靴を履きながら、大鷹さんに行き先を伝える。


「紗々さん、運動と言い、散歩と言い、いきなりどうしたんですか?」


 ただ公園に散歩に行くというだけなのに、なぜか私は大鷹さんに問い詰められた。振り返ると、怪訝そうな顔をした大鷹さんが玄関前で腕を組んで立っている。


 私が浮気をするとでも思っているのか。大鷹さんのような優良物件、そうそう見つからない。それなのに、私がほかの男に目移りでもしたと思っているのなら。


「私のスマホを確認しますか?」


 大鷹さんが私のスマホを見て安心するのなら、スマホを差し出すので確認してくれればいい。とはいえ、今から散歩に出かけようという気分がいつまで維持できるのかわからないので、早めに済ませてほしい。


「いえ、別に浮気を疑っているわけではないのでスマホはいらないです。とりあえず、いきなり歩きだすというのは、やめてもらえますか?僕だって出かけるための準備がありますから」


「えっ?」


「なんでそんなに驚いているんですか?運動も一緒にしたのに、散歩はしないと思っていたんですか?」


「いえ、大鷹さんにそこまでしてもらう必要はないというか、これは私が勝手に始めたことなので」


 大鷹さんの協力は不要です。


 最後まで言葉をいうことはできなかった。大鷹さんがじろりとにらんできたので途中で止まってしまった。


「当然、紗々さんが勝手に始めた事なので、そのまま勝手に行動していて構いません。ただ、その場合、僕も勝手に紗々さんについていくだけなので気にしないでください」


 ずいぶんと自分勝手な男である。とはいえ、運動の時にも感じたが、一緒にやってくれる人がいるのは心強い。


 そんな経緯で、散歩も大鷹さんと一緒にすることになった。



 公園までの距離は徒歩15分ほどである。大鷹さんと二人仲良く歩くことはあまりないので新鮮だった。


「大鷹さんって、運動をしていないように見えますけど、身体が引き締まっていますよね?何か秘訣でもあるんですか?」


 歩きながら大鷹さんを見上げると、にっこり微笑まれる。これはやばい笑みだと理解したが、そんな私の心情に気づくことなく、大鷹さんは軽い口調で理由を明かす。


「毎日、朝と夜に簡単な筋トレとストレッチをしているんです。あとは週に一回から二回くらい、ジムに通っています」


 毎日筋トレしていたとは知らなかった。さらにはジムにも通っていたとは。どうして一緒に住んでいてそんなことも知らなかったのか。まあ、寝室が別なので朝と夜のルーティーンを知るのは難しいだろう。知らなくても仕方ない。


「ジムに通い始めたのは最近です。紗々さんが運動を始める1か月前くらいから、ですかね?だから、紗々さんが運動を始めるって言いだしたときは驚きました。僕が誘っても全然興味がないように見えましたから」


 そういえば、そんな話をしていた気がする。ということは、その前までは朝と夜の自己流の筋トレとストレッチでその身体を維持していたのか。やはり、元の体型がいいと維持するのも簡単なのだろうか。



「とりあえず、2人で運動と散歩、頑張りましょうね」


 歩いているうちに身体が温まってきた。公園内を一周ぐるりと回ってただ家に帰るだけのデートともいえない簡単な道のりだ。それでも、隣に大鷹さんがいるという事実に顔が急激に赤くなるのを感じる。


「歩くとやっぱりいいですねえ。身体がぽかぽかしてきました。紗々さんも、温まってきま」


「ああああ、そ、そうですね。私、昔から汗っかきで動くとすぐに身体が熱くなるんですよ。き、きっとこの顔の赤さもそのせいです。はい」


 手もつないでいない、休日の午後にただ公園まで歩いて帰るだけ。そこにときめく要素は一つもない。ただ隣にイケメンの夫がいるというだけだ。


「紗々さん、もしかして、今、僕と一緒にいることにトキメ」


「さあ、さっさと帰りましょう。帰って甘いお菓子でも食べましょう」


「そ、そうですね。まあ、歩いたからそれなりにカロリーを消費していますので」


 大鷹さんをちらりと見ると、なぜか彼もまた顔を赤くしていた。私の言葉に感化されたのかもしれない。


 私たち二人は、顔を赤くしてそそくさと家に帰る道を歩くのだった。「イケメン歩けば棒にあたる」大鷹さんだったが、この日は珍しく知り合いにも大鷹さん目当ての女性たちにも会わなかった。

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