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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 成人式~あれから○○年経ちました~
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3成人式(大鷹視点④)

「ごめんね。もう用事は済んだから」


「お姉ちゃんの息子、なかなかモテるねえ。私ほどじゃないけど」

「余分なこと言ってないでサッサと戻りましょ。ああ、そこのお嬢さん、不倫はダメよ」


 オレが母親と千沙さんのもとに守君を抱いて歩み寄ろうとしたとき、母親が爆弾発言をかましてきた。まったく、この人たちは人をあおるのが趣味なのか、言わなくてもいいことを言うときがある。


「私は別に……」


「お前、俺たちを置いてどこに行くつもりだったんだ!子供がお前が居なくてギャーギャー泣いてうるさかったんだぞ!」


 「不倫」という言葉で、唐突に成人式の会場での女子たちの会話を思い出す。そういえば、20歳で一児の母親となった同級生がいると言っていた。今時、20歳で結婚していて子供が居るのは珍しい。もしかしたら、目の前の彼女が噂の女性かもしれない。


 まさか、そんな噂の彼女に詰め寄られるとは。独身の女性の方がまだましという状況である。母親の言う通り、不倫はダメだ。この女性は常識や倫理観をどこかに置いてきたのだろうか。これは何を言われても「断わる」一択しかなくなった。もともと断る予定だったが、何が何でも断るしかない。


「あらあら、あなたの旦那さんが来たわよ。可愛らしい赤ん坊までいるじゃない」

「うわあ。面白そうだとは思っていたけど、攻君の修羅場に出くわすとは驚きだわ」


 オレは少しの間、ぼうっとしていたらしい。母親たちの言葉で慌てて周囲を確認する。すると、先ほどまでいなかったオレと同い年くらいの見知らぬスーツ姿の男性が腕に赤ん坊を抱えて立っていた。


「エーーーーーーーーーーーン」


「おい、いきなり泣くなよ。さっきまで静かだっただろう!」


突然、男の腕の中の赤ん坊が泣き始めた。男が怒鳴りながらも懸命にあやそうと赤ん坊に声をかけているが、一向に泣き止む気配はない。先ほどまでの威勢のよさはどこに行ったのか、女性が急におろおろと挙動不審になって目を泳がせている。


「これは大変。守君、そこの怪しいお兄さんではなくて、おばさんのもとにいらっしゃい」

「すごいわねえ、さすが私たちの血を受け継ぎし男」


 母親と千沙さんはこんなやばい状況なのに、平然としていた。オレは守君を母親のもとに行かせて、この後の対応を考える。このままここに残っていたら、不倫相手として認定されてしまう。


「用事を思い出しましたので、俺たちはこれで。行こう、母さん、千沙さん。守君」


「そうねえ。さっさと移動しないと、二次会に間に合わないかもねえ」

「守にはよい経験になったかな」

「攻お兄ちゃん、今日はかっこよかったよ!」


 平然としていたが、さすがに母親たちも長居は無用と判断したのだろう。オレを拉致した女性たちに背を向け歩き出す。オレもそれに続こうと足を踏み出した。今の状況を理解していない守君の言葉が今は心に刺さる。



 しかし、その足は途中で止められた。オレを拉致した女性にまたもや腕をつかまれた。振り返ると、真剣な顔をした女性の顔があったが、何を言われようと俺がこの女性のなびくことはない。


「何、旦那さんが迎えに来たんだから、おとなしく帰ったらどう?まさか、旦那の前で堂々とオレを口説こうとしてるの?だとしたら、かなり面の皮が厚いよね。しかも、その行動は世間では『不倫』っていうんだよ」


 つい辛らつな言葉が口から飛び出した。しかし、オレの気持ちなど考えることなく、自分の赤ん坊が泣いているにも関わらず、女性は旦那だと思しき男を指さし宣言する。


「こんな男、私の旦那じゃないわ。私は大鷹君みたいな男性と付き合って結婚するのが夢なの!」


 かなり頭がおかしな女性だったようだ。中学校の頃は教室の隅でこっそりと息をしていたような女性が数年でこうも変わるのか。驚きと同時に哀れに感じた。中学の時に我慢していた感情がここにきて爆発してしまったのかもしれない。とはいえ、それをオレにぶつけるのはおかしなことだ。


 この女は容赦なくオレの神経を逆なでしてくる。腕をつかんで離さないと思ったら、今度はうでに胸を押し付けてきた。そして、あろうことか、背伸びして自分の顔を俺の顔に近付けてきた。

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