3正月~個性豊かな大鷹家~
さて、本日は1月1日。元旦である。
「改めまして、あけましておめでとうございます。」
挨拶をして、朝食の支度をする。朝はお雑煮だ。今日の予定は、大鷹さんの実家に顔を出すこと。気合を入れなければならない。あの個性豊かな大鷹家に行くのだ。気合がいくらあっても余ることはないだろう。
「それにしても、大鷹さんのスマホは元旦からずいぶん働いていますね。」
机の上に置いてある大鷹さんのスマホは、間髪入れずに振動を繰り返している。大鷹さんは無視しているようだが、それにしても、どれだけ新年の挨拶が来ているのだろうか。年末もたくさんの人が大鷹さんに殺到していたが、相変わらず知り合いが多いことだ。
「うるさかったですね。すいません。」
私の言葉をうるさいと解釈して、大鷹さんは、スマホの電源を落としてしまった。これで静かになりましたなどと涼しい顔をしている。
「いや、通知をオフにすれば、それで静かになるんでは。」
「いいんですよ。どうせ、ただの知り合い。返事をしなくても問題ない連中ばかりですから。さあ、冷めないうちにいただきましょう。」
世界が違うと感じた。そんなただの知り合いともつながっている大鷹さんとの距離を感じてしまった。
「それでは、実家に行くとしますか。」
「その前に、どんな方が来るのか、先に説明をお願いします。」
「説明なんて、まあ、確かにうちは変な人が多いですからね。」
朝食を食べ終わり、出かける前に、今日、大鷹家に誰が来るのかを説明してくれた。
「今日行くのは、僕の実家です。集まるのは、母の兄妹とその家族ですね。昔は、母方の祖父母の実家に挨拶に行ったんですけど、すでに母方の祖父母はどちらも亡くなってしまいました。最近は、僕の実家に集まることになっています。」
父方の祖父母はどちらも老人ホームにいるので、集まることは難しいですね。それに、実家も県外ですし。もともと、集まる習慣はないみたいです。
付け加えた情報は適当に流し、今日集まる人々のことを思い出す。お義母さんのお義兄さんとは会ったことがないが、その子供、きらりさんとその旦那なら会ったことがある。千沙さんと息子の守君にも会ったことがある。それと、大鷹さんの弟、亨さんと奥さんの李江さんも来るだろう。
誰も彼も個性豊かな人々だった。それが一堂に会するというのだ。いったい、どんなカオスが生まれるのか不安がよぎる。
「まあ、毎年何かもめごとは起きますが、これは毎年恒例のことですので、紗々さんが気にすることはありません。」
説明は以上です、では行きましょうか。そう言って、私を車に乗せて、私と大鷹さんは実家へと向かうのだった。
大鷹さんの実家に着くと、すでに人は集まり始めていた。昼食を一緒にということで、女性陣が昼食の準備をしていた。まあ、よくテレビや話に聞くように手料理を作っているわけではなく、スーパーで買ってきたオードブルを机に並べたり、ペットボトルのお茶を紙コップに入れたりという準備をしていた。
「あけましておめでとう。相変わらず、紗々さんはかわいいねえ。オサムにはもったいない。」
真っ先に声をかけてきたのは、大鷹さんのお義母さんだった。かわいいと言われる年でもないし、容姿なんかはどう考えてもお世辞にしか思えない。
「あけましておめでとうございます。遅れてすいません。私も準備をします。」
「別に構わないわ。紗々さんは座って待っていて。ほら、李江さんとでも話していたらいいわ。」
「でも……。」
「じゃあ、ささ、さんは私と話そう。」
きらりさんが私を強引に机に引っ張っていく。そういえば、きらりさんとは、クリスマス以来、実際に会っていないので、その後旦那とどうなったのか結末を知らなかった。私が手伝っても邪魔になるだけだし、せっかくなので話をしようと席に着く。男性陣も特に手伝う様子はなく、それぞれ話に夢中になっていた。
連絡だけは取っていた。その時になぜか、苗字呼びはやめてと言われたので、きらりさんと呼んでいる。
「それで、ささ、さんはおさむ君と仲良くやっているの?」
「まあ、それなりの関係ですけど……。」
「謙遜しなくてもいいですよ。それより、クリスマスの時はすいませんでした。亨が家にまで押しかけてしまったみたいで。」
李江さんも会話に参加してきた。さて、この二人は結局、幼馴染としての仲を取り戻すことができたのだろうか。
「ああ、その顔は私たちの関係がどうなったか知りたがっている顔だな。大丈夫だよ。私にはもう旦那がいるし、李江とは幼馴染で一番の親友だよ。」
「そうそう、お互いに旦那もいるしね。」
どうやら仲直りはできたようだ。それにしても、やはり個性豊かな面々であると思った。
「李江にあまり近づくんじゃねえよ。この男女。」
「はあ、誰が男女だ。バカ野郎。ほんっと、お前らは兄弟とは思えないねえ。おさむ君はかわいいが、お前はくそだ。李江も苦労するねえ。」
大鷹さんの弟の享さんが近づいてきて、李江さんときらりさんの間にどっかりと座る。腕の中には生まれたばかりの赤ん坊が抱えられている。
「それは僕も同じ思いですよ。紗々さんも気を付けてくださいね。この女性は危険ですから。」
大鷹さんも私からきらりさんを離すように私たちの間にどっかりと座ってきた。
「お互い、嫉妬深い男を好きになってしまったわねえ。」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。私なんか……。」
「きらり、てめえはまた、既婚者に手えだすのかあ。オレに相当仕置きされてえみたいだな。」
「そんなわけない。いたたたたったた。」
今度はきらりさんの旦那が登場した。本当に濃い面子ばかりだ。この時ばかりは、私が一番普通の人間と思えてしまうほどだ。
「いい年の大人が何をしているんですか。」
守君が仲裁しようとするが、意味をなさない。大人っぽいとは思うが、しょせんまだ高校生なのだ。本物の大人の迫力には及ばない。
「まったく、私たちの子供はいつまでもガキくさいわねえ。」
「それには同感。ていうか、また兄貴は欠席かよ。正月くらい顔出せって言っているのに。」
大鷹さんの母親と千沙さんもその場に集まってきた。その後ろでは、大鷹さんのお義父さんと、千沙さんの旦那らしき人が苦笑していた。
「そろそろ昼食の準備もできたし、食べましょうか。」
昼食会場は大鷹さんの言う通り、カオスな状態となった。
とはいえ、カオスすぎて説明できないほどの状態だったので、状況説明は省くとしよう。とりあえず、大鷹家はやばいということだけは覚えておくことにした。




