1まったりとした年末~休みの正しい過ごし方~
クリスマスが終わり、年末もあっという間に近づいた。今年最後の仕事を終えた12月28日。いよいよ明日から長期休みの始まりだ。銀行に勤めている私は、年始は1月4日から仕事が始まるが、それまでは休みなので、充分に休みを満喫できる。
「やっと終わったあ。」
仕事が終わり、その後は忘年会だったが、それも一次会だけで帰らせてもらった。なので、私は今、家にいるのだが。
「大鷹さんも忘年会かあ。」
家には私一人だった。大鷹さんも私と同じ、今日が仕事終わりらしい。仕事後に会社の同僚と忘年会があるようだ。私は一次会のみ参加したが、大鷹さんは最後まで参加するのだろうか。
「まあ、鬼の居ぬ間に洗濯といいますか。」
別に大鷹さんが帰ってこないからといって、寂しいわけでは断じてない。これはいい機会だ。今日も私の趣味であるBL小説の続きでも書くとしよう。大鷹さんが居てもいなくても執筆はしているので、洗濯でもないのだが。
私と大鷹さんがモデルの小説もクリスマスを終えていた。クリスマスは読者にも好評だった。なので、その後に続くイベント「正月」の執筆にも気合が入る。
「とはいえ、私に世間一般の正月を期待してもらっては困るが。」
そう、何を隠そう。私はコミュ障ボッチの土日完全引きこもりの腐女子なのだ。世間一般の正月なんてものを過ごしているわけがない。
「とりあえず、大鷹さんの家をお手本に書いてみようかな。」
クリスマスは大変な目に遭ったが、あれはあれでよい思い出となった。きっと、大鷹家は毎年面白おかしい正月を過ごしているに違いない。その大鷹家を訪ねるのだ。波乱の正月が待ち受けている。
私は年始が楽しみになった。のんびりだらだらと過ごす正月はもちろん至福の時間だ。そうは言っても、せっかくの正月。楽しみたい気持ちは少しはあるのだ。
結局、大鷹さんが家に帰ってきたのは、日付が変わろうとする深夜12時近くだった。それでも、日をまたがずに帰ってきたので、許すとしよう。謎の上から目線で私は大鷹さんを玄関で迎えたのだった。
「るるるるん。」
そして、あっという間に12月31日になり、いよいよ明日が正月元旦である。私は、部屋を掃除して、鏡餅を飾ったり、しめ縄などを飾ったりと忙しい年末を過ごしていた。掃除はあらかた終わり、飾りつけも終わり、今はおせちの準備真っ最中だ。
「紗々さんは、年始年末に誰かと会ったりしないんですか。」
年末の数日、現在のおせちの準備をしている私の様子を見ていた大鷹さんが、もっともな質問をする。確かに、休みといえば、今まで忙しかった仲間たちと久しぶりに集まって、どんちゃん騒ぎをしたりするのが定番だろう。
「私にそういう系の質問はどうかと思います。そもそも、私の今までの言動や行動を見て、気づいてもよさそうですが。」
「いや、確認ですよ。新年を迎えるために、張り切って掃除をしたり、一生懸命おせちを作る紗々さんはいいと思いますよ。うん。」
そう言いつつ、大鷹さんが生暖かい目を送っている。張り切って掃除をすることの何がいけないのか。部屋がきれいになって、気持ちがいいではないか。おせちも買うより作った方がおいしいと思うのだが。
ちなみに大鷹さんは出かけたり、家に居たりとバラバラだったが、リア充をしていた。
「私のことをバカにしていますね。まあ、それは構いませんけど。誰もかれもが忘年会だのにうつつを抜かすなんて思わないことです。ああ、二次元は別ですけど。」
そうだ。私には忘年会なんぞ会社でやるしか縁のないものだが、二次元の忘年会は別だ。忘年会も大事な出会いの場。これを活用しない手はないのだ。
「忘年会か。それを組み込むというアイデアがあった。よし、まずは忘年会から始めよう。」
「いつも通りで安心ですけど。今までどうやって年を越していたのか気になりますね。」
「酔っぱらった主人公の色気に充てられて、同僚が家まで運ぶ途中に間違いが怒りそうになるも、颯爽と危機を察して、救い出す恋人。ああ、王道はやっぱりいい。」
私はすでに大鷹さんの声は耳に届いておらず、妄想の中に浸っていた。それを大鷹さんはため息とともに見つめていた。あきれてはいたが、愛想が尽きたとかではなく、親が子供に向けるような視線だった。
「大鷹さんは、誰かとカウントダウンでもするんですか。」
今日は大みそか。午前中はおせちづくりにいそしんでいたが、午後は特に予定もなく、家でゴロゴロしていた。やることといえば、刀剣の擬人化ゲームのイベントをこなすだけだ。欲しい刀がいるのだが、全然顕現してくれなくて、無心でイベント続行中だ。
その間にふと浮かんだ疑問を大鷹さんに質問してみた。ゴロゴロしているのは私だけではなく、大鷹さんも一緒だ。こたつでまったりと過ごしている。
「いえ、去年までは仲間としていましたが、今年は紗々さんと一緒に過ごそうと思って。」
「ふむ。別に退屈なら出かけてもいいですよ。私は一人で年を越しますから。」
私は知っている。大鷹さんのスマホがひっきりなしにメッセージを受信していることに。音は切っているのだろうが、バイブが鳴りっぱなしなのだ。うらやましい限りだ。
「いえ、紗々さんを見ていると飽きないので大丈夫です。それに、せっかくの初の年越しを二人で過ごしたいではないですか。」
それに、僕もまだ顕現していない刀の収集をしようと思います。大鷹さんの視線の先には、私と同じゲーム画面を開いたスマホが見えた。
私たちは、一緒に年末の大みそかの午後をゲームをして、まったりと過ごすのだった。




