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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 クリスマスはどう過ごすべきか~喧嘩するほど仲がいい~
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3予想外の展開②~身近に変人はたくさんいるようでした~

 家に帰宅した私は、大鷹さんにどうやって言い訳するか考えていた。しかし、その必要はなかったらしい。リビングに向かうと、テーブルの上にメモが置いてあった。


「明日には戻ります。」


 今日は土曜日で月曜日がクリスマスイブだ。こんな時期にすれ違いを起こしている場合だろうか。大鷹さんは私を放ってどこに行ったのだろうか。



「いや、そんなことより、今考えるべきことは笛吹さんに対する返事だ。」



 そう、どのように返事をしたらいいのかが問題だ。いくら笛吹さんがイケメンでどきっとしたとしても、お断りするよりほかはない。私の3次元での1位はすでに決まっている。覆ることは今のところないのだ。



「どう断ったら、穏便に相手を傷つけずにすむのかが問題だ。」



 うだうだ考えても仕方がない。今日はもう考える気力もないので、風呂に入ってすぐに寝ることにした。





 次の日は掃除をしたり、部屋の飾りつけをしたりと忙しく身体を動かした。無心に動いているうちにすぐに夕方になってしまった。



「ブー、ブーッ。」


 手元に置いてあるスマホが振動する。慌てて着信を確認すると、笛吹さんからだった。昨日、なんやかんやで連絡先を交換したのを忘れていた。


「もしもし。」


「ああ、ささ、さん。今、おさむ君と会っているんだけどさ。今から、ささ、さんの家に行ってもいいかな。いろいろ積もる話もあるし。」


 何をするにも、唐突な人である。大鷹さんと会っているというのでは、断りようがない。わかりましたと伝え、通話を終了する。


 それにしても、そんなに私の名前が呼びにくいのなら、いっそのこと、苗字の倉敷呼びでも構わないのだが、どうだろうか。それと、なぜ、大鷹さんのことを名前呼びなのか。もやもやとした気持ちが沸き上がってきたが、それを胸の奥にしまい込むことにした。





「ガチャリ。」


 一時間もしないうちに、大鷹さんと笛吹さんが家に来た。大鷹さんは渋い顔をしているが、笛吹さんの顔は反対にとても楽しそうな表情だ。



「こんばんは。ここがささ、さんの家か。いいねえ。」

「ただいま戻りました。すいません。うちに連れてくるつもりはなかったのですが。」



 さて、この後の展開がいまいち予想できない。まさかとは思うが、私のことをあきらめるように大鷹さんを説得していたのか。この後、修羅場だったら驚きである。


 なんせ、告白されたことはないし、告白したのも、大鷹さんが人生初である。そんなコミュ障ボッチの引きこもり腐女子をはさんで修羅場とか、物語上、2次元の上での話であり、自分に起きる、3次元で行われるべきイベントではないのだ。






「とりあえず、お二人の話を聞きましょうか。」


 2人をリビングのテーブルに座らせて、私は自分の分も合わせた3人分のお茶を入れるのだった。



「単刀直入に言いますけど、紗々さんにちょっかい出すのはやめてください。」


「いやだって言っても、聞きそうにない感じだね。」


「当たり前です。紗々さんは僕と結婚していて、僕のものです。いくら女性だとは言え、これ以上のちょっかいは寛容できません。」


 私がお茶を入れている間に話はすでに始まっていた。





「ええと、お茶が入りましたが、私はこの会話に入ってもいいでしょうか。」


「ああ、紗々さん。紗々さんに関するものですので、大丈夫です。」


 そう言って、自分の隣の席を進める大鷹さんに従い、隣の椅子に腰をかける。



「アハハハハハハッ。面白いね。」



 話は深刻さを極めると思っていたら、笛吹さんがそれをぶち壊した。何がおかしいのかさっぱりわからない。




「いやあ、まさか、おさむ君にそんなに好かれている人がいるなんて驚きだ。」


 目に涙を浮かべるほどおかしかったのか。はあ、と涙を手で拭って、やっと冷静になって笛吹さんは話し出した。



「私はね、李江が好きだった。それは本当だ。だから、再会して幸せそうな顔を見て、少し意地悪したくなったのは事実だ。まあ、喧嘩になっても仲直りできたんだから、これは問題ない。」


「こちらにとっては大迷惑でした。昔からあなたはそうです。周りの迷惑を考えずに行動するのは誰に似たのやら。」


「でも、李江たちにはきちんと謝ったんだからこれは解決済みだ。その時に、ささ、さんのことが話題に出たから、気になったんだ。」




「はあ。今回のことは紗々さんにも問題があるということですよ。」




「2人は親戚か何かですか。」


 笛吹さんの行動は、誰かに似ているなと思ったのだ。それで思い出した。大鷹さんのお義母さんの妹「千沙さん」の行動に似ていたのだ。



「おや、気づいていたのかい。それは鋭いねえ。いかにも、私はおさむ君の。」


「僕のいとこですよ。母には兄がいまして、兄、母、千沙さんの3人兄弟なんですよ。」


 世間は狭いというが、まさにその通りだ。身近に変人がこんなにいるとは思いもしなかった。しかし、苗字が大鷹ではないのが気にかかる。




「千沙さんがおさむ君の奥さんは面白い人だと聞いていたから、どんな人か興味は初めからあったんだ。だけど、まさか兄×弟なんて考えている腐女子なんて思わなかったよ。」



 話しながら、笛吹さんは私の手を握ってきた。そのまま顔を近づけてきたが、避けようがなかった。


「ダメです。」

「ブーブー。」


 大鷹さんの制止とスマホの振動で私はハッと我に返って立ち上がる。危なかった。これがいわゆるイケメンの魔力という奴か。危うく、飲み込まれるところだった。





「もしもし。ああ、いいじゃんか別に。嫉妬深いねえ、あたしの旦那は。どうせ、居場所はわかっているなら今からでも来いよ。」


 旦那とは何ぞや。


「ああ、ごめんごめん。言ってなかったか。あたしも実は結婚しているんだってこと。これが私の旦那の写真。」



 通話を終えて、写真を見せてくれた。写真に写っているのは、男装している笛吹さんと、ガタイの良い男性だった。





「ピンポーン。」


 はいはーい。元気よく返事をして、自分の家でもないのに笛吹さんが玄関に向かう。



「はい、これがうちの旦那です。」


 リビングに戻って来た笛吹さんが連れてきたのは、写真の中の男性だった。身長が190センチはありそうな大柄な男性だ。



「うちのきらりが迷惑を掛けました。こいつはオレが引き取ってきつく締めときますので、許してやってください。」


「ええ。だって、大ちゃんが構ってくれないからじゃん。」



「年末でくそ忙しいときに何言ってんだよ。」


 2人は慌ただしく家から出ていった。


 



 急に静かになった室内で私たちは同時にため息をこぼす。



「ええと、とりあえず、今回はこれで一件落着だと思います。」

「そうなってくれると助かります。」



 今日は日曜日で、明日がクリスマスイブ。何とか騒動が終結したのだった。いろいろ言いたいことがあるのだが、何を言っても無駄な気がしたので、心の中だけにとどめておくことにした。

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