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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 クリスマスはどう過ごすべきか~喧嘩するほど仲がいい~
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1思いがけない来客②~仕事場~

 そんなこんなで、大鷹さんの弟さんを私たちの家に泊めることとなり、私は実家に来ていた。事前に連絡はしていたので、すぐに中に入れてくれるだろう。



「ただいま。」

「おかえり。また面倒なことになっているのねえ。」



 玄関のインターホンを鳴らすとすぐに母親が出てきた。やはり、家族と親しくしておくのは大事だと思った。


 

 もし、自分の家にいることができなくなった場合、世間一般の人が頼るべき人の選択肢はいくつかあるはずだ。


 友達、部活やサークルの先輩や後輩、会社の同僚、家族などである。私が社会人であるということもあり、頼るべき人の選択肢はいろいろ考えられる。


 ただし、それはあくまで世間一般の人の選択肢であり、私に選択肢などあるわけがない。これでも、コミュ障ボッチ、土日完全引きこもりを実行して早30年、頼るべきは血のつながった家族しか考えられない。



 両親の家が近くて本当によかった。まあ、一人暮らしをしてもよかったのだが、それすら面倒だったので、実家通いできる職場を選んだのだから、当然である。




 


 母親に連れられて実家のリビングに顔を出すと、すでに父親も帰宅していた。父親は特に私の帰省の理由を尋ねてこなかった。尋ねられても特に隠す必要はないので、聞かれたら正直に話すのだが、わざわざ自分から話す必要はない。



 自宅のマンションに帰宅したらすでに大鷹さんの弟さんがいたので、夕食はまだとっていなかった。そのことはすでに連絡済みなので、母親は私の分まで夕食を作ってくれていた。今日の夕食はカレーライスで、懐かしい味を堪能したのだった。





 夕食のカレーライスを食べ終わって一息ついていると、足元にグリーンイグアナのグリムが近づいてきた。よしよしと頭をなでてやると、気持ちよさそうに目を細めている。


「グリムはかわいいな。もし、お前に兄弟がいたらどんな感じだったのだろうね。」


 この間見た、擬人化したグリムを思い出す。可愛らしい系の男子だった気がするので、兄弟も同じ感じだろうか。グリムはどちらかというと弟のような感じがする。となると、兄がいることになるのだが。



「イメージは王子様系かな。」


 想像を膨らませる。そう、グリムには兄がいた。年の離れた頼りがいのある兄であり、グリムの尊敬する人物であった。なんでもそつなくこなし、みんなに人気の兄だった。


 仲良く暮らしていたのだが、ある日突然、2人は引き離される。もちろん、これは妄想であり、実際にグリムに兄弟がいたとか、ペットショップで買われたとかいう事実は無視である。



 2人は人間にしては珍しい金色の目と緑の髪をもっていた。それが珍しかったのだろう。2人は人身売買にかけられて、それぞれ飼い主に引き渡された。引き離される際に2人はある約束を交わした。



「生きていれば、絶対に会うことができる。だから、それまでお互い精一杯生きるんだ。」


 こうして、グリムは私の家に来たというわけだ。兄の方はどうだろうか。



「これはなかなかの作品になりそうだ。」



 私の脳みそはよくできている。よし、今書いている大鷹さんと私がモデルの話の切りが付いたら、擬人化兄弟物語でも執筆することにしよう。まったく、大鷹さんにはネタをもらってばかりいる。





「……。」


 無言の視線を感じて下を見ると、グリムがじっと私を見つめていた。私の考えを読んでいるのだろうか。別にグリムに考えがばれようとも構わないので、私はグリムの視線を気にせず、妄想の世界に旅立っていった。






 

 次の日、いつも通り銀行の窓口業務にあたっていると、1人の女性が窓口に近づいてきた。お客様の対応をするのが仕事なので、誰がこようが笑顔で素早く対応するのが社会人としての対応である。



 しかし、目の前の女性に対し、思わず私情をはさんでしまった。私はその女性を知っていた。


「すいません。1万円をオーストラリアのドルに変えて欲しいんですけど。」

「ええと、それは可能ですけど、失礼ですが大鷹亨さんの奥さんですよね。」


「……。」


 大鷹さんの弟が結婚しているのは知っている。現在、夫婦喧嘩中だということも昨日の時点で明らかだ。


 弟さんの奥さんは実は、大鷹さんの実家に顔を出した際に会ったことがあるのだ。だから、私のいる窓口に来た女性が大鷹さんの奥さんだとわかってつい、本人か確認してしまった。



 私の発言に驚いたのか、女性は大きく目をみはり、私のことをじっと見つめてきた。そんなにじっと見つめられるような容姿でもないので、恥ずかしくなってしまう。それでも本人か確認してしまった以上、確認をしておかなければならない。



「あなたは……。見間違いではなければ、お義姉さんですか。」



 良かった。相手の方も私のことを覚えてくれていたみたいだ。とはいえ、お互いが知り合いだと判明したとしても、私は今、仕事中だ。



「覚えてくれてありがとうございます。それで、日本円をドルに変えたいとのことですが。」



 後ろに控えているお客さんもいるので、そんなに長く話すことはできない。さっさと用件を終わらせてしまおう。それから、暇なときに少し話をしたいと誘ってみよう。そう思ったが、私には無理だろう。誰かを誘ったことなど皆無なのだから。




「そうなんです。クリスマスに旦那、享と一緒に新婚旅行に行く予定なんです。」

「新婚旅行ですか。」


 はて、だとすると今の状況はまずいのではないだろうか。せっかくの新婚旅行、2人きりでゆっくり過ごせるというのに、その直前で喧嘩なんかしていたら。


 私の思いを読み取ったのか、奥さんは苦笑した。


 私は弟夫婦が喧嘩しているのを知っているが、このことを本人に話してもいいものだろうか。そして、ぜひその喧嘩内容を聞きたいと思っているのだが、聞いてもよいのか気になるところだ。



「そうなんですね。旅行先はオーストラリアですか。わかりました。では、これがドル紙幣になります。」



「ありがとうございます。そう、オーストラリアは今夏でしょう。季節が反対で面白そうって享が言っていたので。真夏の海のサンタって興味がわくでしょう。子供がいるのだけど、私の親が見てくれると言っていたので、それに甘えることにしたんです。」



 嬉しそうに話す奥さんからは、旦那と喧嘩したようには見えないのだが。彼女は両替を終えると、すぐに銀行を去っていった。結局、話をしようと誘うことはできなかった。





 弟夫婦は一体どんな理由で喧嘩をしたのだろうか。新婚旅行を計画しているのに、喧嘩などしていて大丈夫か。こちらが心配になってしまう。


 とりあえず、今日は一度自分の家に戻って、弟さんの方から喧嘩の理由を聞かせてもらうことにしよう。

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