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3身近な人とのR18展開

 さて、大鷹さんの言う身近な百合とはいったい、誰と誰の事だろうか。


「……という話を昨日、大鷹さんとしたのですが、お二人はどう思いますか?」


 わからないことは、聞いてみるに限る。


 次の日、私は昼休憩中に毎度おなじみとなった河合さんと梨々花さんに、昨日の大鷹さんとの話をかいつまんで説明する。当然、近親相姦などという外で出してはいけないワードは口にしない。


「ダ、ダレノコトデショウネ。マッタクココロアタリガアリマセンネエ」


「別に誰だっていいと思いますけどね。それこそ、先輩なら、妄想で誰かと誰かをくっつけることなんて容易いんじゃないですか?」


 二人はそれぞれ別の意見を口にした。最初に口を開いたのは梨々花さんだが、どうにも様子がおかしい。私が質問した瞬間、宙に目を泳がせてあらぬ方向に視線を向け、私への返事が片言になっていた。まるで、マンガみたいな反応だ。こういう場合、質問の答えに心当たりがあるというのがセオリーだ。


「そ、そんな犯人探しみたいな話はやめて、もっと現実的な役に立つお話をしましょう!例えば、もうすぐ4月。新入社員が入ってくる時期じゃないですか!私、気になっている子がいるんですよ」


 極めつけは、あからさまな話題の転換。追求すれば、私の欲しい答えを知ることができる。とはいえ、無理強いはよくないので、ここは先輩として寛容に話題転換への誘いに乗っておこう。


「梨々花ちゃん、話題変えるの下手すぎでしょ。それで、先輩はもし、身近に百合カップルがいるとしたら、誰と誰をカップリングして妄想しますか?」


 私と先輩、でも構いませんよ。


 しかし、河合さんはまだ私の話題を引っ張りたいようだ。ちらりと梨々花さんの様子をうかがうと、恨めがましい視線を河合さんに送っていた。


 それにしても、妄想とはいえ、河合さんと私をカップリングするのはどうかと思う。そもそも、私は大鷹さん一筋なので、例えフィクションでも他の誰かとカップリングしたくない。いや、もし仮にカップリングしたとしても、浮気した気分になるのでやめておきたい。


「いや、さすがに自分と他の人とのイチャラブを書くのは恥ずかしいです」


 思わず、心の声の一部が声に出てしまう。確かに自分の事のように書く小説は、感情移入もしやすく書きやすい。しかし、それはあくまで別の登場人物であるからこそ書けるわけであり、自分をそのまま投影するのではない。そこをはき違えないで欲しい。


「そうですか。残念。もし、書く予定があったら、出来上がったものは一番に私に見せてくださいね」


 河合さんの表情はまったく残念に思っていない表情をしていた。私をただからかっていただけかもしれない。悪そうな笑顔を浮かべている。


「そ、それなら!」


 ここで梨々花さんが大きな声で私たちの注目を集める。梨々花さんが声を張り上げるのは珍しい。


「わ、私と、え、江子先輩、の話はどうでしょう?それなら、書けますか?」


「ええと、梨々花ちゃん、それはいったい、どういう意図が……」


「別にそれは構わないですけど、さすがにR18展開に持ち込むのはムリですよ」


「R、18……。私と江子先輩が……」


 百合といっても、ほのかに香る程度の関係から、ディープなR18展開を含む関係など様々だ。BLボーイズラブでも、ライトBLなる学生同士の爽やかな関係などもある。それくらいの軽いものなら、河合さんと梨々花さんの二人をネタに書こうと思えば書けるだろう。



「先輩、梨々花ちゃんが壊れましたよ。まったく、先輩の口からそんな卑猥な言葉が出てくるとは思いませんでした」


「ひ、卑猥……」


 河合さんに冗談交じりに言われた言葉に困惑する。私だって立派な成人女性だ。年齢制限について言及しただけなのに、卑猥といわれるのは理不尽過ぎる。


 しかし、本当に先ほどから梨々花さんの様子がおかしい。私の言葉で梨々花さんは自分と河合さんのR18展開の妄想をしてしまったのかもしれない。そうだとしたら、なかなかの強者だ。私なら、知り合いと自分とのR18展開は想像したくない。そもそも、夫とのR18展開だって予定はないのだ。


「R18展開はフィクションだからいい、というものですよ」


『うわあ』


「な、なんでそんな目で見るんですか。二人とも」


 ぼそりとつぶやいた言葉は二人にしっかりと拾われてしまった。そして、二人は意気投合したようなハモリを見せて、変人でも見るような視線を私に向けてきた。


「ああ、もうこんな時間。倉敷先輩、ちょっと」


 その後、スマホで時刻を確認した梨々花さんが私の元にやってきた。


「もし、私たちのR18展開のものが書けたら、河合さんには内緒で、私にだけ見せてくださいね」


「いや、だからそれは」


「絶対ですからね!」


 梨々花さんは、それはもう、素晴らしい笑顔で控室から出ていった。

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