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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 恒例行事になりそうです
201/235

9つまらない男(守視点)

「あいつじゃね?兄貴の言ってた義姉さんの幼馴染って」


「そうかもね。あれが紗々さんの幼馴染かあ」


「ていうか、あんな地味な奴になんでうちの兄貴が逃げるような真似してるんだ。兄貴が一睨みしたら、逆にそいつの方が逃げていきそうだけどな」


「まあ、人には相性ってものがあるから、攻君が苦手なタイプってだけじゃないの?」


 僕たちは攻君から離れて、紗々さんの幼馴染らしき人物を探しに製菓コーナーに戻ってきた。近くにはバレンタインの為に設けられた催事場があるので、製菓コーナーにいなければ、催事場近くにいる可能性がある。


 三人で話ながら歩いていたら、亨君がいち早く探していた人物を発見した。亨君は、お兄さんのこと(攻君)で苦労していた経験があり、そのせいか妙に勘が鋭いところがある。彼が指さした方向に目を向けると、催事場に並べられたショーケースの中のチョコを真剣に眺めている、ひょろ長い男性の姿があった。


 とはいえ、見つけたはいいが、どうやって声をかけようか。いきなり三人で一斉に近寄ったら怪しまれるかもしれない。三人のうち、誰が率先して声をかけたらよいだろうか。


「守、お前、面倒なこと考えてるだろ?こういうのは、ノリで話し掛けたら、大抵うまくいくんだよ」


「でも、攻君に知り合いだってばれないようにって言われているよ」


「そんなの気にしてるのか?だったら、心配いらないだろ。だって、俺と兄貴ってあんまり似てないから」


 確かに亨君と攻君は兄弟なのにあまり似ていない。攻君はイケメンと言う部類で、女性関係のトラブルに見舞われがちだが、亨君からはそういったトラブルについて聞いたことがない。しかし、兄と似ていないことを亨君は特に気にしていない。むしろ、兄と似ていなくてよかったというほどだ。


僕が亨君と攻君のことを考えている間に、亨君はすでに話しかける気満々でこっそりと相手にバレないように距離を縮めていく。仕方ないので、僕と大輔さんも同じように後をついていく。


「大人になって、こんな事をする羽目になるなんて、やっぱり、紗々さんは攻君やきらりが気に入った女性だねえ」


「大輔さんもそう思うだろ?守、こういう作戦で行こうぜ。これなら、多少怪しまれても、そんな男性もいるのか、ってごまかせるぞ。まずは守るから声をかけて……」


 亨君が僕たちに作戦を伝える。しかし、それは作戦と呼ぶには余りにもお粗末なもので、思いついたことをただ言葉にしているだけだった。とはいえ、作戦など考えなくても、話しかければいいだけだと思いなおす。僕たちは彼がどんな人物か気になるだけで、親しくなろうとか考えていない。相手がどんな反応を示そうが、僕もここにいる二人も気にしない。



「あの、もしかしてそのチョコは女性にあげるんですか?」


「男から女にチョコをあげるやつって、俺ら以外にもいるんだな」


「僕たちも、バレンタインに女性にあげようと思っているんです」


 そうと決まれば、さっそく僕の方から紗々さんの幼馴染に声をかける。ひょろ長い男は僕たち三人を見て不審そうな表情を見せたが、すぐに笑顔に表情を切り替えた。


「まあ、たまには趣向を変えて、女性から男性っていうのもアリかなと思って。君たちもそういう感じかな?」


 笑顔がぎこちないが、他人に向ける表情としては間違ってはいない。


 亨君の言う通り、どうしてこんなつまらなそうな男から攻君は逃げているのか。なにか、弱みでも握られてしまったのだろうか。彼が弱みを握られているところは想像がつかない。


それにしても、趣向を変えてという言葉が、バレンタインが男性優位のものだと思っていて、不快だ。しかし、そんなことで目くじらを立てても仕方ない。僕も高校生らしい、無邪気な笑顔で言葉を返す。

「そうなんですよ。男が手作りのお菓子を作って渡したって、いいと思いますよね?」


「お前、そんなキャラじゃないだろ」


「うるさいな」


「すみませんね。彼らは自分の仲間が増えたと思って、嬉しがっているんです。大目に見てやってくれませんか?」


 せっかくの笑顔が台無しになるセリフを亨君が言ってきた。僕の笑顔は同級生たちには結構人気だ。それなのに、僕の周りの親戚たちにはどうにも不評らしい。大輔さんも苦笑している。


「手作りのお菓子を作るのかい?それはすごいね。僕はお菓子とか作れないから、市販のチョコを買ってあげるつもりなんだ」


「そうなんですね!でも、それもアリだと思いますよ。市販のチョコだって、バレンタイン限定で、おしゃれで可愛らしいものとかたくさん売っていますもんね」


 話していてわかったが、本当に普通の男だった。これ以上話していても、何も面白くない。視線を亨君と大輔さんに向けると、二人もすでに興味を失ったようなつまらない顔をしていた。

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