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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 フリマアプリはほどほどに
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5ほどほどが一番

「それで、このカード、3枚いくらで売れたと思いますか?」


「500円とかですか?」


 とりあえず、実家から持ってきた○○モンカードをフリマアプリでまとめて出品した。それから3日後、ばら売りで3枚ほどカードが売れた。夕食時、大鷹さんに売れたカードの値段の予想をしてもらうと質問してみる。


 ちなみに今日の夕食はしゃぶしゃぶだ。9月終わりになってもまだまだ暑い日が続いていて嫌になってしまう。いつになったら涼しい季節がやってくるのだろうか。


 そんなことを考えながら、しゃぶしゃぶの肉を口に入れて味わう。フリマアプリ未経験の大鷹さんの予想だが、まあ妥当な線かもしれない。私も相場を知らなかったらそのくらいで考えていただろう。すでに相場を調べ済みの私からしたら、大鷹さんの値段予想は。


「売りませんね」


「もっと、高いってことですか?」


 大鷹さんが箸をおいて、あごに手を当てて考え込む。私だって、20年前の○○モンカードにそこまで高額な値段がついているとは思ってもみなかった。


「なんと、その倍、1枚1,000円ですよ。そして、このカードは1枚1,500円の値が付きました」


さすがに一日で売れるとは思っていなかったが、どうやら個別で欲しいカードがある人がいるらしい。私は大鷹さんと会話しながら、先ほどのフリマアプリでのやり取りを思い出す。



 出品して1時間後、○○モンカードの出品にコメントがついた。


『○○と◇◇と△△が欲しいのですが、ばら売り可能ですか?』


 まとめて出品したカードは100枚ほど。その中の3枚が欲しいようだ。さっそく他の出品者の値段設定と売れ行き状況を調べてみる。フリマアプリには検索機能もついていて、簡単に調べることができてとても便利だ。


「ばら売りだと、安い人は安く売っているけど、高い人だと……。い、1枚1万円……。3枚4,000円で売っている人もいる……。このキャラだと高値が付くけど、他は高いとは言っても、そこまでだなあ」


 どうやら、当時の値段の5倍から10倍、下手したらさらに高値で取引されている。私だったら絶対その値段では買わない。とはいえ、売り切れとなっているので、高値で買っている人がいるのだ。つまり、私が高値をつけても買ってくれるということだ。コメントしてきた人も、ある程度の相場はわかっているはずだ。


 とりあえず、私は1枚1,000円で提案してみることにした。


『1枚1,000円で、3枚3,000円でどうでしょうか?』


『その値段で、専用でカードの裏表をアップで出品お願いします』


 話はどんどん進んでいく。カード類は調べてみると、少しの傷や汚れ、欠けがあると価値がかなり下がるらしい。そのため、他の出品者のコメントでは、細かくカード状態を聞きすぎて、そのコメント主に対して断わりを入れていたのも見かけた。


 とはいえ、私の持っているカードは保管状態が悪く、既に傷も汚れも欠けもある。出品時にもそれは記載している。それでもコメントしてくるので、私の場合はある程度で買ってくれるだろう。


そんな感じでやり取りを終え、最終的に最初の3枚のキャラではなく、別のキャラになり、2枚が単価1,000円、1枚が人気キャラで単価1,500円となり、合計3,500円で売れたのだった。



「なるほど。ばら売り交渉や値段交渉も出来るんですね」


 回想をしていたら、どうやら大鷹さんは私がやっているフリマアプリを見て、実際のやり取りを見つけたらしい。それにしても、熱心にスマホを見ているが、大鷹さんは何か欲しいものでも見つけたのだろうか。


「これが紗々さんのアカウントですか?」


「ええと……。どうしてそれを」


 私は小説投稿サイトでのペンネーム、アカウントはすでに大鷹さんにばれていて、大鷹さんは私の小説のファンとなっているが、フリマアプリに関しては何も言っていない。写真は見せたことがあるが、わざわざアカウント名までばらしていない。


「いや、写真を見せてくれたでしょう?そこから調べればすぐにわかりますよ」


「そういうものですかね……」


 確かに写真は見せたし、私が出品したものを検索すれば、それっぽいものが見つかる。でもだからと言って、特定して見せつけてくるものだろうか。大鷹さんのスマホ画面には私のフリマアプリでのアカウントが表示されていた。


「とりあえず、売れて良かったですね。送るときは、住所や名前って相手にばれるんでしょうか?」


「その点については大丈夫らしいです。匿名配送が推奨されていて、多少高いですが専用封筒やシールを貼って郵便ポストに投函したり、コンビニに荷物を持っていったりするだけで、そこからは自動で相手に匿名で配送される仕組みがあるようです」


「すごいですね……」


 そうなのだ。とはいえ、私は思ってしまう。運送業界の厳しい状況、人手不足や給料の問題を考えると、すごいと感心しているだけではダメな気がする。だからと言って、私が出来ることはないし、利用できるものは利用していくだけなのだが。


「まだまだたくさん○○モンカードはあるので、気長に売っていきますよ。それに、調べてみたら『平成レトロ』とかいうジャンルで昔のキャラクターメモ帳とかが当時、一冊350円とかだったのが、今は一冊6,000円くらいで取引されているんです。だから、実家から昔買ったメモ帳も持ってきて売っていこうかと」


「紗々さんが楽しければいいんですけど、ほどほどにしてくださいね」


「廃人にはなりませんよ。結局、フリマ転売ヤーとして、収入を稼げるほどのものじゃないですし。せいぜい、断捨離で小遣い稼ぎができれば程度にとどめておきます」


 何事も、嵌まり過ぎは良くないものだ。私の小説のように人間の身体や記憶まで普通に売買出来てしまったらと思うと恐ろしい。そこで嵌まりだしたら、私もどうなることやら。


 ということで、私は今後も気長にフリマアプリは続けていくつもりだ。そのせいで、小説の投稿が遅れる可能性も否めないが、小説も趣味としてやっているので、こちらも完全には止まらないように細々と続けていくことにしよう。


「ていうか、この暑さ、いつまで続くんでしょうね。暑すぎて、夏バテ気味で何もやる気が起きません」


「そうですよね。フリマや小説はともかく、日々の生活ができていれば良しとしなくてはならないくらいです」


『早く涼しくなって欲しいなあ』


 私と大鷹さんの声がハモって、部屋の中に響き渡る。令和ちゃんだか神様だか誰だかわからないが、10月に入ってもこの暑さは辞めてください。よろしくお願いします。


 こうして、私たちの秋の夜長は平和に過ぎていくのだった。


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