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結婚したくない腐女子が結婚しました(連載版)  作者: 折原さゆみ
番外編 波乱の新年の幕開け
148/235

4苦手な理由

「じゃあ、私たちはこれで帰るよ」

「お邪魔しました」


「気をつけて帰るのよ。紗々は攻君に迷惑をかけないように!」

「母さんの言う通りだ。迷惑をかけないようにするんだぞ」


「迷惑なんて……」


 回転寿司で昼食を取り、実家に戻った私たちは少し休憩をして家に帰ることにした。実家を出るときに挨拶したら、両親に口をそろえて言われてしまった。とはいえ、私の方も、完全に両親の言葉を否定できないでいた。迷惑をかけないようにはしているが、知らず知らずのうちに大鷹さんの負担になっているかもしれない。それは大鷹さんに聞いてみないとわからない。


「とんでもないです。僕の方が紗々さんに迷惑をかけないようにと、気をつけているくらいです!」


「あら、それならいいけど」

「紗々たち夫婦の問題だから、私たちが首を突っ込むのも野暮な話だったな」


 どうやら、私の心配は杞憂だったらしい。私たちは仲良く来るまで家に帰った。



「それで、先ほどの幼馴染設定の話の続きですけど」


 車で家に戻った私たちは、リビングのテーブルに向かい合わせに座って、各々スマホをいじってゆったりと過ごしていた。30分程そうしていたら、唐突に大鷹さんが実家での私のつぶやきを蒸し返してきた。記憶力の良い旦那である。私は思いついた理由を口にする。


「別に大した理由なんかないですよ。ただ、現実的に幼馴染が恋人とか結婚にたどり着く割合ってどれくらいかなって考えたら、なんか納得いかなくて」


 私の場合も大雑把に考えれば、お隣の当間家の爽太君とは幼馴染ということになる。しかし、私たちは仲が良くなかったし、最終的に私は大鷹さんと結婚した。


「現実と照らし合わせて、都合が良すぎるから苦手、ということですか?」


「まあ、そういうことになるのかもしれません」


 改めて、私は創作において、幼馴染設定があまり好きではない。幼馴染が登場するのは仕方ないとして、最終的に幼馴染同士が恋愛関係になっていくというのが苦手だった。隣同士で学校や放課後、休みの日などで会う機会が多いかもしれない。他人よりも家族みたいな交流をしていることもある。だとしても。


「幼馴染同士が恋愛関係に発展して、最終的に恋人同士になり、結婚する。それが私の中ではどうにも受け付けなくて」


 話しているうちに、受け付けない理由を思いつく。果たしてそれを口にして、大鷹さんは納得してくれるだろうか。いや、納得してくれなくても、それはそれで構わない。


「大鷹さん、私、自分がなぜ、幼馴染設定が苦手で受け付けないのか、理由が判明しました」


「そ、そうですか。では、拝聴しましょう」


 私の気迫に押されたのか、大鷹さんが少し引き気味で私に言葉を促す。一度深呼吸して、簡潔に理由を告げる。


「刷り込み、ってやつだからです!」


「刷り込み……」


 言葉にしてみると、我ながら変な理由だ。とはいえ、これが一番しっくりくるのだから仕方ない。


「だってそうでしょう?保育園、もしくは赤ちゃんのころからずっと一緒に過ごしてきたからこそ、その人がいいみたいな感じになっているんじゃないかと思うんです。だから、それが誰だとしても、いいかもって思います」


 まあ、実際は主人公が地味で取り柄のない普通の人間なのに、幼馴染は容姿端麗、ハイスペックの場合が多い。その辺も加味して好きになれないのかもしれない。


とはいえ、私だって、世の中の幼馴染設定を否定したいわけではない。中には私の苦手を越えて、とても面白い物語に仕上がっているものもある。BLの幼馴染同士の恋愛でもお気に入りの作品も存在する。


「紗々さんの苦手な理由?っていうのはワカリマシタ。紗々さんらしいなって思います。とりあえず、僕はそれを聞いて安心しました」


 大鷹さんは胸に手を置いてほっと息をついている。何が安心なのか。私が首をかしげていたら。


「だって、苦手な設定っていうことは、紗々さん自身も、幼馴染とくっつきたくないってことでしょう?だから、お隣さんが紗々さんの職場に転職してきても大丈夫だなと思って」


「はあ」


 大鷹さんの言うことは一理ある。今回、私に舞い降りた幼馴染との再会。まさかの同じ職場に転職してきたというのは、創作においては恋愛フラグが立っているというほかない。私にその気がなくても、さくしゃの手にかかれば、あっという間に私は彼との間に恋愛感情を持つようになってしまう。とはいえ、それはあくまで創作での話だ。ここは現実で、私としては絶対に持つことのない感情だ。


 私のことは心配いらないとして、相手の感情については未知数だ。私には大鷹さんがいるので、神様にはぜひ、私の元に面倒後を巻き込まないでほしいと願うばかりだ。

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