6大鷹さんと一緒に居た女性は……②
【妄想2】
「久しぶりだね。大鷹君は今も昔も変わらず、いい男だねえ」
「いえ、先生の方こそ、お変わりなく」
大鷹はGWに久々に高校の時の担任に会っていた。たまたま、高校の同窓会があり、仲間と話しているうちに当時の担任のことを思い出したのがきっかけだ。昔、憧れていた先生に連絡を取るのは緊張した。高校の時に無理やり入手した連絡先が今も使われているかわからなかったし、自分のことを覚えていない可能性もあった。しかし、先生はあっさりと大鷹とカフェで会う約束をしてくれた。
「それにしても、あの大鷹君が結婚ねえ。いったい、どんな女性と結婚したのか、先生、とっても気になるよ。あの頃はクラスどころか、同学年の女子や先輩、後輩から大鷹君、モテモテだったから」
「いえ、そんなことは……」
先生は僕の憧れであり、好きな人です。今も昔も。
先生は大鷹と年が5歳しか変わらない。新卒で教員採用試験を合格して新人として、大鷹の学校に赴任してきた。生徒のために全力を尽くす姿に、いつの間にか憧れ以外の感情を持つようになっていた。
「それで、わざわざ卒業してからずいぶんと空くなか、私に連絡を取ってきた理由は何かな?大鷹君は真面目だから、奥さんがいるのにほかの女性と二人きりになるなんてしないと思うんだけど」
こてんと首をかしげながら、先生は当然の疑問をぶつけてくる、黒髪のショートヘアのたれ目で、年上なのにどこか可愛らしいと思える先生。高校当時に抱いていた思いが再燃する。
「実は、結婚はしているんですけど、妻とは別れようと思っていまして」
さりげなく、大鷹は先生の指を確認したが指輪はしていない。だとしたら、高校当時から抱える思いを伝えてもいいのではないか。
「エエト、じゃあ、大鷹君は私に奥さんとの別れ話の相談を?」
「そうです。そして、離婚出来たら、好きな人に告白しようと考えています」
先生は急に顔を真っ赤にしておろおろと視線を左右にさまよわせ始めた。これは勝算がありそうだ。
「相談、乗ってくれますよね?」
大鷹は自分の容姿を最大限に生かして、じっと熱意を込めた視線を送る。先生はぎこちない笑顔になりながらも、大鷹の視線から目を離そうとしない。
店員が料理を運んできたが、二人の世界に浸っている男女を前に数分、その場に立ち尽くしていた。
【妄想3】
「先輩、プライベートで会おうなんて珍しいですね」
「ああ、ちょっと相談したいことがあって」
大鷹は会社の後輩をGWの休みに呼び出して、一緒にカフェでランチをしていた。妻のことで相談するのに適任だと思ったからだ。
「もしかして、奥さんのことですか?それなら、僕が適任ですものねえ」
後輩は、大鷹より3歳下の女性である。最近、夫と離婚したと聞いていたので、どうやって離婚したのか聞いてみようと思った。僕という一人称だが、ふんわりとした茶髪を肩まで伸ばした小柄だが体つきは女性らしい曲線をもっている。
「その、本来なら相談することで離婚の嫌な記憶を思い出させるのではないかと思ったんだが、他に相談できそうな人間が身近にいなくて……」
大鷹はひそかに後輩のことを観察していた。おっとりしていそうな見た目だが、仕事は早くミスも少なく、社内ではかなり頼りにされている存在だ。大鷹もその姿に惹かれていた。そんな女性と結婚した男が羨ましいと感じている自分に戸惑いを覚えている。
「離婚ねえ。大鷹さんに奥さんの写真を見せてもらった時から、思っていたんですけど」
後輩はニコニコと微笑みながら、大鷹の妻のことを批判する。しかし、既に大鷹は妻に対して関心がなく、ただ黙ってその批判を受け入れる。そして、後輩は最終的に大鷹の相談に乗ってくれると約束してくれた。
「大鷹さんを射止めたことは尊敬しますけど、その後のフォローがなっていません。私なら、大鷹さんみたいな良い男をこんなになるまで追い詰めませんよ」
「そういってくれると助かるよ。このままだと結婚自体が嫌な思い出になってしまうから」
「それなら、私と結婚についての思い出を上書きしますか?」
二人は暗い笑みでふふふと笑いあう。お互い、結婚に一度失敗している。そんな二人にも新たな幸せをつかむ権利はある。
(人間、表と裏があるのは当たり前だ。俺だってそうだ。だから、彼女とは合わなかった)
目の前の後輩は大鷹の意図に気づいて、本性を見せてきた。人間は目的のためなら、自分の裏の面を簡単に見せてくる。
大鷹は妻のことを思い出しながらも、テーブルの上の後輩の手に自分の手を重ねた。




