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終 望んだ未来、掴んだ幸福

 何だかんだあったけど、僕は師匠と先生、ドールマスターと暮らし始めた。いやさ、最近は城の方へ行ってると、半日足らずで迎えに来るんだよね。先生も師匠も、あんまり顔を合わせるのは嫌がってないし、ならいっそ城に住んじゃえ!という事に。


 考えてみてほしい。とんでもな人物が二人、常識人二人という生活を。ツッコミ不在だと、あの二人がもうどうしようもない事になるんだ。師匠が何かを作れば暴走し、先生が改良(改悪?)案を出す。で、更に酷い被害が出て、僕とドールマスターとで後始末と二人へのお説教が始まるわけで。もうすぐ子供も生まれるっていうのに、本当にもう・・・。

 え、誰の子か?ここにいるのは四百歳超えの怪物と、千百歳超えの化物ですよ?・・・両方に決まってるじゃないですか、見た目はどっちも美人なんだし。ドールマスターには呆れられたけど。

 あ、因みに師匠の父親はこのドールマスターで、僕の曾祖母は先生だって事を最近知った。既に家族も同然だし、今更って感じだけれど。

「そういえばフェン君、この子が生まれたら、性はどうするの?私の青式は賢者としての通り名だし、マクディーンにする?あとね、生まれた子に賢者としての種が無いと、私達じゃまともに世話が出来ないわよ?」

「何を今更。僕がその対策をしなかったとでも?『創成』の二つ名は伊達じゃないですよ。こっちが一時的に精霊の加護を与える薬で、こっちが賢者としての加護を数分間抑える薬です。片方だけでも認識阻害はほぼ無効化出来ましたけど、併用する方が確実ですね」

 実験協力は、ドールマスターの弟子にやってもらった。五十年修行させているが、未だ賢者としての資格は得られていない、という事で快く了承してもらえた。

「因みに、製作協力は精霊王です。先生へ加護を与えてるからと、ちょくちょく仕事をサボってこっちに来てました」

 ・・・今もいるし。青さんには僕の加護が付いてるから、僕の子供も同然だよねーとか、意味不明な事をほざいてる。イラッと来たし、この精霊は封印してもいいよね?

「えっとさ、フェン君?僕を封印したら、青さんへの加護も消えちゃうよー?」

「ああ、それは問題無いよ。加護を残したまま、四百年位は解けない結界があるから。永遠の氷河って結界、心当たり無い?意識を残して、氷漬けのまま亜空間に閉じ込めるってやつ。あれの改良版だよ」

 改良というか、改造版だけど。術式は原形を留めていないし、永遠の氷河と違って期間も限られている。ま、僕が魔力を追加すれば半永久的に発動するんだけど。

「何それ怖い・・・。青さーん、本当にこんなのと子供作ってよかったの?」

「勿論、後悔してないわよ?千歳近い歳の差があっても愛してくれるなんて、最高の旦那だもの。でも、一つだけ文句があるのよねー」

 言いながら、僕の頬を抓ってきた。あれ、折角作った痛覚無効のポーションが、全然効いてない・・・?

「この肌よ、肌!不老不滅の魔法なんて物を作った挙句、私より綺麗な肌ってどういう事?!ちょっとそこの精霊王、笑ってないで何とか言いなさいよ!」

 怒っているようで、顔は笑っている。とにかく美人で楽しい人だから僕も一緒にいて飽きないし、何より毎日が新鮮だ。え、もう一人?あれは今、また怪しげな物を作ってるから、完成する前に叩き壊してお説教だ。黄金城塞を展開すれば、あの馬鹿火力でも貫けない事が分かったし。癇癪を起こす度に禁呪を撒き散らすもんだから、暫く閉じ込めておくかと、ドールマスターと話している程だ。もうすぐ臨月だし、大人しくしてほしいんだけど。

「まさか、黒の方が先に生まれるなんてね。私、千歳を超えておばあちゃんよ?しかもそれが、曾孫の子供だなんて・・・。訳分からないわよね?」

 ・・・すいません、若干反省してます。でもでも、好きになったものは仕方ないのです。気になったのは先生の方が先なんだけど、師匠は世界樹を利用して妊娠から出産までの期間を、通常の半分近くにまで圧縮している。ちゃんと産まれれば文句は言わないけど、師匠のようにならない事を祈るばかりだ。いや、ホント真面目に。

「ねえ、フェン君?夫婦なんだから、いい加減にその先生とか師匠って呼び方、やめないかしら?今じゃ家族そのものなんだし、ね?」

 またいつもの、あの笑顔だ。僕を虜にしてくれた上に、何度も無茶な事をさせてくれた、あの。

「それじゃ、えっと・・・アキラ?」

 呼び掛けると、またニッコリと微笑んで口付けをしてくる。僕もそれに応え、肩を抱き寄せた。昔思い描いた幸せの形とは、ちょっと違ったけれど。望んだ未来は少し形を変えて、目の前にある。僕はこの幸せを、絶対手放したりしない。この世界最高の賢者、その名に賭けて・・・。

一旦、ここで締めさせていただきます。

次回作が浮かんだ事、予定していた完結まで書ききった事が理由ですが、後々書けなかった部分を含め、番外編として再掲載も考えています。


ここまで読んでくださった方に、惜しみない感謝を。次回作もドタバタ劇にはなっていますが、そちらも応援して戴ければ幸いです。

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