第四十八章 続く日常、繋がる明日へ
まだ暴れ足りないと、師匠もくっついて来た。ちびっ子の姿に戻ったのは、ちょっと残念だけど。
「あの姿で青と一緒にいたくないのですよー」
・・・やっぱり同族嫌悪らしい。師匠とは別方向だけど、先生も結構ぶっ飛んでるし。
城の近くに飛んでみたら、確かにとんでも面白い事態になっていた。多種多様な魔物が視界を埋め尽くす程に歩き回り、木々の間を飛び回っている。師匠、出番ですよー。え、僕?僕はほら、先生の護衛という重要な役回りがあってですね。決して面倒臭いとか、攻撃魔法は苦手だし、まして範囲制圧なんて出来ないとか、そんな事は無いんですよ?黄金城塞を展開させて、僕と先生を囲む。ふ、師匠並の馬鹿火力が無ければ貫けまい。
「一匹一匹は雑魚ですけど、これだけ多いとやり甲斐がありますねー」
おおー、頼もしい言葉が聞こえてきたぞ。って、何でこっち見てるんですか?え、お前もやれ?というか、結界に引きこもるなら何で来たのかって?
「分かりました、少しだけ手伝います・・・。取り敢えずあいつら全部、一箇所に纏めればいいですか?」
開けた場所へ誘導するように、結界を展開していく。師匠が展開している魔法は、いつだったかに見たあの魔法だ。結界内部に対象を抑え込んで、禁呪をぶっ放すというやつ。あー、結構懐かしい出来事だなー。
勝負は一瞬で決まった。というか、星崩しとアースクエイク、更に流星雨の禁呪連発に耐えきれる生物はいないと思う。え、地龍なら耐えきる?寧ろそこから反撃してくるって?先生の言う事なら、多分本当なんだろうなー。やだなー、そんなのと出会ったら僕、手も足も出ないじゃないですかー。
「フェン君の結界も、充分に反則よ?内外を自由に反転出来る上に、あれだけの威力を抱え込んでも、綻び一つ見せないんだもの。自分で発掘しておいてなんだけど、厄介極まりないわね」
見せたのは、いつもと変わらない笑顔。毎度僕の心臓を早鐘のようにしてくれる、あの笑顔だ。参ったな、余計な事を言うのが野暮ったくなるよ、この状況・・・。
実は記憶を失っていた時の事を、私は覚えている。ドールマスターはどうだか知らないけれど、何故か私ははっきりと。あの時の慌てたフェン君の顔、とても可愛かったわ・・・。
(絶対に、言ってあげないけどね?)
そこだけは、譲れない。だってフェン君の中での私は、いつでも冷静なお姉さんなんでしょう?・・・黒と同様、時々化石とか骨董品呼ばわりしてくる事もあるけれど。そこはほら、おいおい問い詰めればいい事よね。魔力量は以前よりも上がっているから、不老不死もかけ直せたし。時間はそれこそほぼ無限、いくらでもちょうきょ───もとい、教育する時間はあるんだもの。
「そうそう、なんたってこの僕の加護だ。そこらの精霊なんかとは、比べ物にならない効果だよ?」
「あら、まだいたの?加護だけくれたら、とっとと精霊の棲家へ帰っていいのよ」
「ほんと、つれないねー、青さんは。なんだったらさ、フェン君にバラしてあげようか?君が彼位の頃、どんなやらかしをしたのか───って、痛い痛い!親子揃って乱暴すぎない!?」
本当にこの精霊王は、小生意気というか、なんというか。どうにも誰かさんの顔が浮かんでくるのは、気のせいかしらね?可愛い顔して小憎たらしいというか、抓りたくなるというか。




