表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/50

第四十七話 取り戻した日常

もうちょっと続きます

「さて、予想以上に早かったけど、約束は約束だ。あの二人には、僕の加護を与えよう。明日には記憶も含めて元通りになっているはずだから、会ってみるといい」

 精霊王はそう言って去ろうとした。・・・が、そうは問屋が卸さない。無表情の師匠が、その頭をむんずと掴んでいたのだから。

「えっと、黒ちゃーん?どうしたのかな、顔が怖いよ。あとね、痛いから離して───痛い痛い、食いこんでるって?!割れる割れる!」

 師匠って細腕の割に、異常な位に力があるんだよね・・・。割れるかどうか知らないけど、僕の腕を叩き折った事はある。寝ぼけてて力の加減が出来なかった、とかほざいてたっけ。

「あなたね、誰の弟子に危険な事をさせたか分かってるかしら?何もなかったからいいようなものの、一歩間違ったら死んでたわよ。覚悟、出来てるんでしょうね?」

 いや、誰よりも何よりも、お前が言うな。気付かないだろうけど、一応ジト目を向けておく。

「いや、だってさ。一度加護を抹消されたんだよ?どんな事情にせよ、生半可な事じゃ復活させられないし。何より、僕の眷族が納得しない。下から信用されない王様って、何より辛いんだよ?」

「それはそうかもしれないわね。ちょっと頭にきたから、壊滅まではしないけど、憂さ晴らしはさせてもらうわよ?」

 そう言って師匠は、大量の魔力を放出し始めた。補助具があっても、今の僕じゃ到底真似出来ない程の魔力制御。って、描かれてる魔法陣がかなり危ないやつなんですけど?!

「ちょ、アースクエイクは本当にやめて!?っていうか、なんで一人で禁呪の同時多重展開とか出来るの?ああー、星落としと熱核加速砲はホント駄目だってば!」

 ・・・うちの師匠は冗談抜きに、世界を滅ぼせるんではなかろうか?星落としって確か、魔法で巨大隕石を作り出して落下させる、とかいうやつだ。魔法陣の規模から推測すると、一つの国が軽く滅ぶやつだ。って、それって僕も巻き込まれない?

「大丈夫、私達は発動の瞬間に飛ぶから。フェン君、さっきの結界を張っておいてもらえる?断空結界だと魔法の発動も邪魔するから、威力が落ちるのよねー」

 言われるがままに詠唱を済ませ、結界を構築する。いや、ほら。キレてる師匠に逆らうと、僕にもとばっちりが来るし?うん、命は惜しいからね。あ、でも黄金城塞が何処まで耐えきれるのか、そういう実験はいつかしてみたいかもしれない。今じゃないけどね!


 森の家に帰り、一息つく。と言っても、お茶を淹れてからだったけど。

「んー、久々にスッキリしたわー。ドールマスターにやられっぱなしだった分、色々と溜まってたのよね。ところでフェン君、久々なんだし、ちょっとこっちに来てくれる?」

 椅子に座ると、師匠に手招きされた。嫌な予感がするけど、逆らうと後が怖いしね・・・。

 隣の椅子に座ろうとしたら、手を引かれて膝上に座らされた。え、いつもは逆なのに、どういう事だろう・・・?

「大きくなったわよね・・・。うちに来た時は、まだ子供だったのに。ねえ、あれから何年経ったんだったかしら?」

「考えてみたら、もうすぐ六年ですね。長いような、短いような・・・。典礼術式から叩き込まれて、魔導工学や精霊学、その直後にエリクシルを作ってみろ、でしたっけ。僕が思い描いていた薬師とは、全くの別物になっちゃいましたけど」

 そんな事を言っていたら、後ろから抱き締められた。普段見ていた姿とは別の感触があって、かなり恥ずかしい。いや、何処がとは言わないけど。

「・・・そこだけは、私もちょっと反省してるわ。フェン君なら出来ると思って、色々と無茶な事を言ったしね。私の弟子になった事、後悔してない?」

 口には出さず、首を横に振って否定した。後悔なんて、する訳がない。今こうしている事が、幸せなんだと思っているから。

「黒、フェン君貸してくれない?!城の周りに大量の魔獣が溢れてきて、私じゃ手に負えないのよ!あーもう、こんな時にドールマスターは何処か行っちゃってるし、何でかフェン君は小屋にいなかったし!」

 ちょっと甘い空気を吹き飛ばすように、先生が現れた。っていうかその魔獣大量発生って、ヴェンタスのせいだよね?あいつ、僕がいないからって間引きサボったな・・・?

「どうしたのよ、そんな狐に化かされた、みたいな顔をして。いいから、すぐに戻るわよ?今は防衛人形がなんとかしてるけど、そう長くは保たないんだから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ