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第四十六話 たったひとつの゛こたえ゛

「フェン・マクディーン君、君の覚悟を試させてもらうよ」

 精霊王はそう言って、僕を結界の中へ閉じ込めた。攻撃魔法は使えるけど、転移を始めとして亜空間収納やいくつかの魔法が発動しなかった。術式は組めるのに、発動が妨害されるというか、完全に止められるというか。・・・まさか。

「そこは君達が断空結界と呼んでいるモノ、それとほぼ同じ状態になっている。空間に干渉する魔法は一切使えないから、そのつもりでね?」

 やっぱり。師匠のが先なのか、それともこっちが先かは分からないけど、僕にはどうしようもない。ふと師匠を見れば、そっぽ向いてるし。あ、多分これ師匠が教えたやつだ。

「試練の説明がまだだったね。今から君の前に、五百の精霊を顕現させる。その中からあの二人に加護を与えた精霊を見付ける事、それが条件だ」

《ただし、彼らには殺すつもりで君の相手をしろ、そう伝えてある》

 最後の一言は、念話で入ってきた。そりゃ、今でさえちょっと怖い顔つきなのに、そんな事言ったら師匠が何を仕出かすか・・・。って、殺すつもり?


 向かってくる精霊は、全部が同じ顔をしていた。もうちょっとこう、個体差とか何とか、見分けがつくようにしてほしいけど。

 そんな事を考えていると、嵐のように攻撃魔法が乱れ飛んできた。駄目だ、相殺するには手数が足りない!

 詠唱しての結界構築は無理があるため、結界の多重展開で攻撃を凌ぐ。一枚壊されては新たに作り直し、壊されてはまた作り直しを繰り返していた時、懐かしい匂いを感じた。

「先生・・・?」

 向かってくる精霊の数体から、先生と同じ匂いを感じた。いや、数体どころじゃない、全部からだ。これ、もしかして・・・。

 先生と同じ匂いがする精霊を、傷付けられない。そう思った僕は、ただ只管に耐える事を選んだ。あんなに優しい人に刃を向けるなんて、出来るわけがないよ・・・。

 そんな時、とうとう結界が破られて魔法が目の前へ迫ってきた。ああ、もう駄目かな───。

《フェン君、精霊王は何て言ってた?》

 先生の声が、頭に響いた気がした。ああ、そっか。そんな、単純な答えなんだっけ・・・。

[連ねるは堅牢。砲火は届かず、剣は無力。如何なる炎にも焼かれず、風は無益に過ぎるのみ。何事にも侵される事能わず不動なり。その名は黄金、意味は不滅。顕現せよ───]

 黄金城塞。僕の手持ちでは唯一の詠唱を必要とする魔法で、僕の最大にして至高の護り。先生と研究した成果の一つであり、古代に栄えた黄金都市から発見した魔法書に記載があった魔法だ。

 ───曰く、数十万もの大群から都市を守護した城壁。傷一つ許さず、最上級魔法さえ弾き返した鉄壁の要塞。師匠が誇る金色結界の大元であり、意味の由来となった物だ。それを僕は、自分ではなく精霊の保護に使った。向かって来た五百、その全ての為に。

「・・・何故気付いた?」

「魔力の中に、先生と同じ波長を感じたんですよ。賢者という称号が精霊に依る物と言うなら、膨大な魔力はその精霊からの物のはず、と思ったので。あの桁外れな魔力量ですから、数体の加護でもないんじゃ、とは考えましたけど。まさか、三百近い精霊から加護を受けていたなんて・・・」

 僕が捕らえた精霊のうち、三百弱が先生、残りがドールマスターへ加護を与えていた。しかもこれが全てではなく、先生については半分にも満たないんだとか。・・・伊達に千年以上生きている訳じゃない、とかなんとか。

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