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第四十五話 試験と試練

 行き着いた先は、なだらかな平原だった。遠くには険しい山脈が見えるものの、歩いても近くなる感覚が無い。幻術の一種で、違った景色を映し出しているらしい。見える景色は人それぞれで、師匠には荒れ果てた荒野が見えているんだとか。

「さて、いつもならそろそろ出てくるんだけど」

 師匠の話では、適当に歩いていると何処からともなく、精霊達が集まってくるらしい。ここに人間が来るのは珍しく、まだ世界と関わりのない個体は人と接する機会を待ち望んでいるんだとか。サラマンダーやウンディーネ、シルフといった属性精霊もここに棲んでいて、召喚されればこの場所から転移していくようだ。

「あれー、黒ちゃんじゃーん。何々、遊びに来たのー?珍しくお連れさんもいるんだね?」

 茂みから、一体の精霊らしき影が飛び出してきた。うん、妖精とは違う。魔力の塊のはずなのに実体があるようで、僕の頭に飛び乗ってきた。

「あー、この子は青ちゃんの親類縁者かな?同じ匂いがする。で、助けたい人がいるから、僕らの所に来たわけだ」

「察しが良くて助かるわ。余計な問答をしてる時間が惜しいのよ、精霊王とやらの所まで案内してくれる?」

 この精霊、口から言葉を発しているようで、耳から言葉が入ってくる。森で聞いた声は、念話みたいに頭に直接響いてきたんだけど。そして師匠、この精霊とも知り合いなんですね・・・。

「案内の必要なんて無いよ。何を隠そう、精霊王とはこの僕の事だからね」


 通された場所は、少し歩いた場所にある洞窟だった。結構深い所なのに、明るさを感じる。蛍光草や夜光石の類は見当たらないのに、どうしてこんなに明るいんだろう?

「僕達精霊族は、体が魔法で形作られている。僕に実体があるのは、数千年に渡ってこの世界を見守って来たからさ。この洞窟は特殊でね、そんな僕と長年近くにいたせいで、石が変質してきたんだ。おかげで、夜でも明るいままだよ?」

 なるほど、と壁を叩いてみる。硬くはあるけどちょっと脆くて、素材に使えるような物ではなさそうだ。

「僕達の領域へようこそ、フェン・マクディーン君。君が助けたいのは、古い賢者であるアキラ・青式と最古の人形師、ユーリ・黒鉄かな?」

「はい、その通りです。その方法を探す為に、ここへ来ました」

 凍てつくような視線が、全身を貫いてくる。決意に、迷いは無い。引き返すなら今だと足が震えるけれど、この程度で怖気付くなら、師匠とこうも長続きしていたわけがない。

「助けるのは、実は簡単なんだ。二人に加護を与えた精霊が、今は君に付いているだけだからね。君に与えた加護を、彼等に返してくれれば、それでいい」

 ───でも、それは君が求める方法じゃないよね。精霊王が呟くと、何体かの精霊が姿を見せた。魔力の塊であるそれらは、不可視の存在だ。それが目に見える形で現れるなんて・・・。

「この子達は、僕の護衛でね。フェン君が僕の出す試練に打ち勝てるのなら、僕の加護をあの二人に与えよう。失敗したら、相応の対価を要求するけどね。今まで通りに過ごしたいなら、これが最善策だと思うよ」

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