第四十四話 温かい日々、その為に
区切りの関係で短めに。続きは水曜までには必ず・・・。
転移した先は、勿論師匠の所だ。もしかしてとは思うけど、そんなのは万が一にも有り得ない。だって師匠だし。
「おかえりですよー。って、何かありました?顔が辛そうなのですよ?」
きょとんとした顔の師匠を見て、一気に緊張が解けた。気付いたら、全力で抱き着いてるし。ああ、何やってるんだろ・・・?
「フェンくーん、本当にどうしたんですか?私としては嬉しいですが、ちょっと早いのですよー。あと、出来れば離してもらいたいなー、って」
小さい体は少し温かくて、抱き締めるのに丁度いい高さだった。ま、多分二度としないけど。
「あー、そういう事でしたか。フェン君はどうしたいんです?」
事情を話したら、やけにあっさりと理解された。特に嘲笑ったりする事もなく、淡白に。同族嫌悪みたいなものだったのかな?
「出来るなら、前みたいに暮らしたいです。師匠と二人でここに住んで、時々あの二人が遊びに来たり、僕達が行ったり。師匠と先生とんでも論争を傍から眺めたり、時々巻き込まれたり。正直勘弁して欲しいですけど、楽しい事にかわりはないんですよ」
いつまで一緒か、それは分からない。それでもと、僕は願った。ここまで強く願って、その方法を考えてるんだから。叶わなかったら、それこそ嘘だ。だってここには、一人の賢者ともう一人、なりたての賢者がいるんだから。
「方法なら、一つだけありますよー。その為には私も、こっちの姿にならないとなんだけど」
言いながら師匠は、いつしか見た姿になっていた。なるほど、改めて見てみると先生にそっくりだ。あ、先生の方がちょっと若いかも?
「私でも、知識として持っているだけなんだけどね。精霊の棲家の奥に、精霊王というのがいるのよ。そいつが私達賢者という『称号』の大元なんだけれど。それに直談判出来れば、どうにか出来ると思うのよ」
問題は、精霊の棲家の奥地へ、どうやって行くか。精霊の棲家そのものなら、師匠は転移出来るらしい。奥へは足を踏み入れた事がなく、いつも入口近辺で雑談する程度、むしゃくしゃした時は魔法を乱射して終わりなんだとか。いや、充分すぎる程に災害じゃ・・・。
「それしか、方法が無いのなら。そもそもですね、師匠と僕とで出来ない事なんて、あると思います?そりゃ、技術も知識も僕は圧倒的に劣ってますけど」
「フェン君なら、そう言うと思ってたわ。覚悟も出来ているようだし、早速行くわよ?」
覚悟?そんなの、ここに来た瞬間には決まっている。準備なんていつでも出来ているから、それも問題ない。師匠がくすりと笑った直後、僕達は光に包まれた。もし精霊王とやらが邪魔をするというなら、踏み潰してでも乗り越える所存です、はい。




