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第四十話 今から、これから

予想より長引いてきた・・・。

去年の年内に終わらせるという目標は何処へ消えたのやら?

「あれ、フェン君何処に行くのですか?そっちは方向が違うのですよー」

「今やってる修行が、まだ終わってませんから。あと一ヶ月もかからないでしょうし、それが終わったらすぐに帰ってきます。師匠を一人にしておくと、何を作るか想像も出来ないので・・・」

 ちょっと暗くなった顔が、またすぐ戻ると言っただけで明るくなった。ずっとそうなら見た目相応で可愛いと思うんだけど、中身は三百過ぎの怪物だ。騙されちゃいけない。

「教えてもらってない事もまだあるので、必ず戻ります。それじゃ、行ってきまーす」

 後ろ手に手を振って、転移魔法陣を発動させる。一方通行の物だから、間違って変な所に飛ぶ可能性も無いし。何処ぞのポンコツとは違うのだよ、ポンコツとは。ヴェンタスは先に帰したから、おいてけぼりにしてしまう事もないし。


「戻りましたー。青式先生、ちょっと聞きたい事が───」

 小屋に戻ると、そこは一面の銀世界だった。いや、雪じゃなくて本当の銀で。色からすると、錬魔銀の方かな?これだけの量を作るのに、僕ならどれだけの時間と魔力を必要とするのか。考えただけでちょっと身震いする。

「あら、おかえりなさい。ごめんね、もう少しかかると思ってたから、素材置き場にさせてもらったの。もうすぐ終わるだろうから、待っててもらえる?」

「別にそれはいいんですけど・・・。どんなのを作ってるんですか?」

「作り自体は単純よ。純錬魔銀製の自立行動型で、魔力自動生成機能付きだけれど。球体関節とか魔法構築についてはフェン君のを模倣しちゃったみたいだけど、大丈夫よね?」

 そっかー、思い付きを真似したかー。僕にすれば天上人とも言える人が真似るなんて、結構嬉しい事だったりもする。いや、大陸一の人形師だし。そこらの駆け出し人形使いじゃなくて、本物中の本物だ。

「む、戻っていたか。すまんな、勝手ながら君の案を使わせてもらった。この球体関節もそうだが、魔法構築用の魔石加工が良い発明でな。荒削りではあったが、基礎理論はそのまま利用させてもらっている。後は外装を作りあげれば完成だ」

 ドールマスターの背後には、数体の人形がいた。内部骨格も錬魔銀製なのか、青白い輝きを放っている。胸の中央には大きな魔石が配置してあり、それに寄り添う形で小さめの魔石が置かれていた。師匠が以前すいすい君に使っていた方法で、僕がそれを改造したんだっけ。幾つかの魔石に魔法陣を刻み、組み合わせを変えるだけで、別種の魔法を単独で発動させられる、という方法だ。

 ドールマスターが作ったそれは、僕の使っている物より魔石数少ない。いけいけ君で六個の十二種類だけど、ドールマスターのは四個で二十種類もの魔法に対応するらしい。魔法陣の角度とか距離が関係するらしいけど、僕には理解出来なかった。時間をかければもしかしたら、だけど。

「説明はまたゆっくりするわ。今はそれを完成させないとだし、精霊魔導核を作れるようになったら、黒の所へ戻るんでしょう?」

 バレてたらしい。いや、それでもここへは来るつもりだったけど。師匠とは違った意味で、この二人とは会いたいんだよね。・・・何でだろう?

「以前渡した、あの水晶は持ってる?あれに魔力を流すと、私が持っている物に反応が出るの。簡単な会話も出来るし。こっちへ来る時は、そうしてもらえる?この小屋なら授業もしやすいから、こっちへ来るようにしてね」

 願ったり叶ったりで。城へ行ってもいいけど、もし不在なら魔力も時間も無駄になってしまう。僕の転移魔法はそこそこ消費が激しくて、ここへ来る場合は一日に八回も使えるかどうか、という所だ。距離が延びればそれだけ消費量も増えるし、何よりも精度が怪しくなってくる。補正の為に魔力を使えば、それだけ他の魔法が使えなくなるわけで。魔力の回復ポーションはあるけど、あれは美味しくないというか、かなり不味いから飲みたくない。因みに先生も同意見で、味の改良と効果量の増強を試した事があるんだとか。あんまり良い素材が見つからなくて、断念したらしいけど。

「いつかフェン君が完成させてね?それまで待ってるから」

 満面の笑みで言われ、研究成果を渡してきた。精霊紀程じゃないけど、結構分厚い。やれるかどうかじゃない、やれって事かな・・・。

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