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第三十一話 片鱗

 目の前には一本のポーションがある。無駄にしていいよ言われたけど、これも僕からしたら立派な教材だ。考えもしない配合で、特上の効果を持つポーション。鑑定してみたら体力だけでなく、魔力回復まで併せ持っている事が分かった。素材は見えていないけど、いつかこの領域までたどり着く、そう決心するには十分な代物だ。

「それもいいけど、まずは分離の仕方だよね」

 一人呟いて、作業机に向き合う。魔法で作った物で、高さや平坦性を含む使い勝手は完璧だ。ちょっとでも傾いていたら、素材の計量に影響が出るしね。既製品だと部屋に合わなければ意味が無いし、何より家そのものの傾きに合わせるのが面倒だ。まあ、家自体魔法で作ったから、その心配は無かったけど。最近、こんなのばっかり作ってた気がする。全部師匠のせい。

「製作に使われた魔力を鑑定、って言ってたっけ?」

 考えても仕方ない、という事で鑑定を起動させる。モノクルはあっちに置いてきたから、自前で鑑定するしかない。もちろんわざとだ。簡単には戻らない、という意思表示なんだと気付いてくれればいいけど。


「うーん、これも駄目か・・・」

 五本目の薬瓶を投げて、背伸びする。背中からバキバキという音がした、ちょっと疲れてるのかな・・・。

 思い付いた方法を試して、既に五回目。分離には成功しても、上手く混ざらないという結果が続いていた。方向性は間違ってないはずなんだけど、何がおかしいんだろう?

───『逆波長の魔力、までがヒントよ』

 不意に、そんな言葉を思い出した。そういえば、ボソッと言ってたっけ。何でわざわざそれで止めたのか?その後に続く言葉が、答えそのものかもしれない。

「魔力の波長って、どうやれば変えられるんだろ・・・」

 そして、根本的な所で躓いた。そもそも魔力の波長というのは個人で全く違っていて、そう操れる物ではない。見えているのは先生の物で、綺麗な波を描いている。僕のと違って安定したそれは、単純ながらも一種の芸術とも言えた。


 ふと気付けば、机の左側に大量のメモ書きが積まれていた。考え事をする時の癖で、思い付いた事を書き留めていく。収納に何十というメモ帳が常備してある理由だ。

「ん・・・、これはまだ試してないかな。これはもうやった奴だし、こっちはそもそも論外。あんまり使えるのが無いな・・・」

 書き付けていくと、頭の整理にもなる。多分、今考え付くものは全部書き切ったはずだ。その中で良い感じに出来そうなのを選んでいるんだけど・・・。

「フェン君、調子はどうかしら?長い事続けているし、そろそろ一休みしない?」

 何の気配も無く、先生が入ってきた。あ、床中に薬瓶が転がったままだ・・・。

「これ、もうほぼ使い切ってないかしら?よくまあ、ここまで試したものだわ・・・。あら、これは・・・」

 拾い上げたのは、唯一中身が残ったものだ。成功したかと思ったけど、鑑定したらポーションのままだった。確か、遠心分離の応用でやったんだっけ?

「そうなの。お茶、ここに置いておくわね。あんまり根を詰めたら駄目よ?分からない所があれば教えにくるから、程々にね」

 茶器が載ったトレイを置いて、先生は出て行った。そう言われてみれば、一人でやれとは言われていなかったっけ・・・。


「どうだった、あの少年は?」

「正直に言うと、凡人とは思えないわね・・・。エリクシルの時もそうだったけれど、私達の域に片足を入れかけてるわ。あれなら、近いうちにでも世界の声が届くんじゃないかしら?」

「それ程か・・・。今のが終わった後、私からも課題を与えるとしよう。それで声が届けば良し、そうならなくとも積み重ねがあれば、いつか届くだろう」

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