第二十九話 師匠と一緒に。・・・いつまで一緒?
久々のポンコツ発揮
「出来ました、すいすい君十号機改ですー」
ここ数日、立て続けに先生の所に行っていたせいか、今日は一日師匠の世話をする事になった。そして出されたのが、いつだったか暴走しまくった例のあれだ。・・・懲りてないらしい。
「風の魔石、そして亜空間収納の効果を共に弱めたので、暴走する危険は低くなったのですよー。全部が全部暴走するわけではないのです」
根拠が無い、根拠が。というか、十号という事は僕がいない間も作っていた訳だ。・・・その辺も一度、きっちり問い詰めないといけない。
「ではー、スイッチオンです」
・・・動き出した、今の所はマトモだ。まだ油断出来ないけど。設計図という物を一切描かずに作る為、後から構造を確認出来ない。
・・・五分経っても、異変は起きないままだ。奇跡でも起きたかな、これは?今までで最長記録だ。
「って、何で僕の亜空間収納が起動してるんです?」
亜空間には共鳴連鎖という現象がある。原理こそ解明しきれていないけど、一人の術者が別のある術者と同じ空間を開いた時、双方の亜空間が同時にその入口を開こうとする。今まさに、その現象が起きているわけで。
「フェン君の亜空間なら、大きさも出力も丁度よくて。干渉は簡単だったので、使わせてもらいましたー」
「師匠ー?僕の収納には色々な素材やら食料やら、結構大量に入ってるんですけど?って、炎龍の鱗やセイレーンの涙も、全部ゴミ塗れじゃん・・・」
・・・終わった。洗浄魔法を使っても、完全に除去するのは不可能な程に、埃や泥に塗れている。魔力付きのゴミを取り除くには、その魔力の波長に合わせた魔法を使う必要がある。ゴミの大半は師匠が作った何かの残骸だから、僕にはどうする事も出来ないわけで。
炎龍の鱗は偶然に入手出来た物で、大陸北端に棲んでいるドラゴンが持つ鱗だ。高い知恵を持つドラゴンで、別に人里を襲う事はない。たまたま迷い込んだ旅人や冒険者を助ける、という話さえある。
ただ、直接姿を見せるのは数十年に一度で、先生が言うにはそういう気分の時に遭遇出来た場合に、鱗を数枚分けてもらえるんだとか。かなり高い魔力を誇る逸品で、防具にすれば爆炎魔法を防ぎ、武器にすれば触れた相手を灰も残さない程、徹底的に燃やし尽くす位の炎属性を付与出来る。これを使ってどんな物を作るか、色々と考えていたのに・・・。
「ま、まあやってしまった物は仕方ないのですー。ここはですね、暴走したり爆発しなかった事を───」
「師匠、しばらくここを離れます。行先は想像がつくと思いますが、来ても相手はしません。事情はきっちりしっかり話すので、相応の覚悟をしてから来てください。あ、ユニコーンも近くまで連れていくので、ご心配無く」
自分でも驚く程に冷たい声をしていた。第一声が謝罪なら、そこまで言うつもりも無い。反省なら笑って許したけど、言い訳だったので論外だ。他人に頼るのは情けないけど、ここは仕方ない。師匠に痛い目を見せる力は、今の僕には無いからだ。
ユニコーンの世話は僕の仕事なので、連れて行かないと何をしでかすか分からない。師匠にはちっとも懐かないんだよね、あれ・・・。
「という訳で、取り敢えず一月程お世話になります」
ある古城から歩いて十分の所に、即興で家を建てた。土と水属性の魔法を駆使した家で、師匠の爆撃にだって耐えきれる、自慢の出来栄えだ。念の為にと、先生が結界を張ってくれている。
「一月と言わず、ずっと居ていいわよ。折角貰えた炎龍の素材を駄目にされたら、そりゃ怒るわよ・・・。というか、そこのユニコーン。さっきから念話を送ってくるし、特殊個体よね?」
普通のユニコーンは人に対して、過剰な接触をしない。子供や群れからはぐれた個体は別として、自分から人には近寄らないんだけど。こいつは何故か、異常なまでに接触を持とうとしてくる。名前?ポチとかベスとか、そんなので十分じゃない?
《貴様、そのような名で我を呼んだ日には、突き刺すぞ?》
「流暢に喋るわね・・・。んー、私も名付けは苦手なんだけれど。風属性が得意なようだし、ヴェンタスでどうかしら?」




