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第二話 何とかと天才は・・・

「買い出し、ですか?」

「はいー。色々と生活用品が不足してきたので、補充しないといけないんですが。自作でもいいんですけど、素材も無くなってきてますし、その補充も兼ねて、です。行ってもらえますか?」

 言われてみれば、洗剤やちり紙なんかは、何処でも見かけないような物ばかりだった。何というか、品質が良すぎるのだ。ひとつまみの洗剤で二人分の洗濯物は綺麗になり、紙は濡れても破れない。どんな作り方かと見ていたら、何故か金毛山羊の皮なんて代物が出て来た。この皮、中堅規模の国家であれば、国宝指定されても不思議ではない物だ。二十年に一度生まれる金の毛を持つ山羊を生け捕り、十年間自然のままに育成して初めて採取出来る、という物品なのだから。あれだ。この師匠、絶対に頭のネジが数十本抜け落ちてる。生まれた頃に雷で浴びたのかな?

「出掛ける時はこの魔法陣を使ってくださいー。村の手前、徒歩五分の辺りに出られますのでー。戻る時はこっちの薬を。是非是非、使った感想を聞かせてくださいねー」

 渡された一枚の布と、一本の薬瓶。布には一つの複雑怪奇な魔法陣が描かれていて、何故か流転と循環、回帰の文字が刻まれているのが辛うじて判別出来る程度だ。どういう事だろう?薬の方も、鑑定結果は不明。覚えたての技術だし、まだ精度が低いのかもしれないけど。


 買い出しそのものは、あっさりと終わった。元々一人暮らしだったし、必需品の項目は一通り覚えている。原理や理論は把握しきれていないものの、亜空間を応用した収納技術のおかげで、重い荷物を持ち歩く必要もない。限度なんかは、存在するんだろうか?今度、水でも使って実験してみようかな。

「それにしても・・・。使い回せる転送陣とは、ね」

 手元には、一枚の布だけがある。出掛けに渡された、転送魔法陣だ。この手の物は大抵が設置型で、対応する陣同士でしか行き来が出来ない。それが嫌なら、使用する度に手書きで構成するしかないのだった。

「こんなのが知れ渡ったらどうなるかなんて、考えるまでもないよな・・・?」

 奇襲に略奪と、戦争好きな連中からすれば喉から手が出る程に欲しい技術だろう、と思う。実際、精霊工学を利用した、消耗出来る兵士を作ろう、なんて事を考えている国もある位だ。

「まあ、あの人はそんな事、これっぽっちも考えてないんだろうけど、さ」

 うちの師匠は、良くも悪くも無邪気な人だ。自分が作りたいと思ったから作る。どんな使い方をするか、なんて自分の勝手だ、と言わんばかりに。完成した技術を、他者へ向けて売り込む事はしない。薬の対価に僅かばかりの金銭を貰い、それで満足するような人だし。

「でもまさか、エリクシルの対価があの森一帯の土地だった、なんてな・・・」

 破格の金額である。もちろん、エリクシルを受け取った側からすれば。伝承にある、数百年前に滅びた国家。不老不死の霊薬を入手した王族が、それを狙う別の国家と戦争になり、共倒れに至った。その霊薬を作ったのが、誰あろううちの師匠だ。いつだったか、掃除中にボロボロの羊皮紙を見つけ、解読してみたらそんな証文だったのだ。

「三百歳であの見た目なんだから、詐欺だよな・・・」

 三百歳じゃありません、二九九歳ですー、なんて声が聞こえてきたけど、気にしたら負けだ。というか、何で来てるんだろう?

「収納に干渉してみたら、買い出しが終わっていましたのでー。たまにはお弟子さんと一緒に出掛ける、というのも師匠の務めかなー、と思った次第なのですよー」

 要約すると、一人で留守番が嫌なのと、整理が面倒だから、後でやらせよう、という事だ。うん、読心術なんて要らないな。少なくとも、この人相手なら。

「仕方ないですね・・・。この街なら以前住んでいたので、ある程度は分かります。何処に行きたいですか?」

 あの森に住み始めて百年、師匠にとっては目新しい物が多いと思う。それに、たまにはこうしてのんびりとする位が、僕にとっても良い距離感だ。ちんまりした姿は何処か危なっかしくて、気を抜いたら見失いそうだけど。

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