第十九話 薬師の元祖。それに・・・?
「さて、自己紹介がまだだったわね。私はアキラ・青式、この世界にある凡そポーションと呼ばれる物の原典を作り、広めた者です。更に言えば、そこにいるノゾミ・黒識の母親でもあるのだけれど」
「はい・・・?」
何かこう、恐ろしい言葉が聞こえたような?気のせいだと思いたい。
「非常に、ひっじょーーに、甚だ不本意ですが。それが私の母親なのですよー。好みの男なら誰彼構わず誘惑する、どうしようもないクズなのです」
「言ってくれるわね。それにしても、何故彼には私の魔眼が通じないのかしら。何か特別な防御でも敷いているの?」
青式という女性の魔眼は、堕落の魔眼というとても希少な物らしい。一瞥するだけで相手を誘惑、強制服従させられる代物なんだとか。魅了の最上位的な物かな?
「金色結界から漏れ出した、精神防御の亜種ですよー。古代種の魔獣が扱う類の術式なので、抜け道を知らなければそう破れない代物ですー」
ああ、異常に面倒な術式だと思ったら、そんな代物だったんだ・・・。さっきまで黙りこくっていたと思ったら、いきなりのドヤ顔。ちょっとうざい。
「金色結界って、黄金要塞の跡地から発掘したという、あれかしら?そんな物を個人で展開出来る程度に落とし込むって、あなた阿呆なの?何処で育て方を間違えたのかしら・・・」
「僕が言うのもなんなんですけど。青式さん、でしたっけ?鑑定した限りだと、薬は薬でも毒薬ばかり作っていたようですが。そんな母親を真似した、という可能性が高いのでは?」
モノクルの鑑定を通す間でもなく、僕自身の鑑定で十分見えた。異常と言える程に、毒薬生成の能力が高いんだ。5段階評価で5が出てるのに、一般薬生成は3という時点でお察しくださいと言わんばかりに。僕の能力の場合、一般薬は4で他は3と出る。単純計算だと、一般薬については僕の方が上という事、なんだけど・・・。
「そうじゃなくて。この子、昔から攻撃系統の魔法が無駄に得意だったのよ。賢者と認められた時に私は創造、この子は破壊なんて付けられた位には。癇癪を起こす度に目につく物を片っ端から壊滅させるものだから、私もあの人もその度に尻拭いへと駆り出されて───」
「その話はやめるのですよー。それより、用が済んだらさっさと帰ってくださいー。寧ろ帰りやがれです」
ちょっと待った、待ってほしい。目に付く物を片っ端から壊した・・・?それで今300歳。賢者と言われたのが今から200年前って事は、もしかして・・・。
「ルミス草の原生地、ユリアス遺跡群、あとバミール国だったかしら。そこら辺りの年代のって、全部この子の仕業でねー。ルミス草は私が創ったエリクシルの材料だったから、新しいレシピを考えろって事で、製薬知識を叩き込んだのよ。その間に賢者の称号を認められたから、破壊なんて渾名が付いたのだったかしら?」
なんてこった!お願いだから、その時に常識というものを、一緒に叩き込んでおいてほしかった・・・。
とはいえ、当人から聞いていた話とは若干異なる事が、今回分かった。ぐぬぬ、という顔をしているけれど自業自得だ。これを機にちょっとは生活を改めて下さい。本当、真面目に。
「もうちょっと遊んでいきたいけれど、今回はここまでにしておくわ。フェン君、君にこれをあげる。もしこの子が何かやらかしたら、それを起動してね?私かドールマスター、手の空いてる方がすぐに飛んでくるから」