第十八話 出会ってしまった。ちょっと後悔
「師匠ー、ポーションのレシピを創ったのって、誰なんですか?」
ふと湧いた疑問。今まで色々な薬を作ってきたけれど、誰がこれを作ろうと思い始めたんだろうか、と。薬草を混ぜて液状にして、なんてよく思いついたな。
「駄目です、フェン君には会わせられませんー。あんな色情狂と会わせたら最後、パクっとされちゃうのですよー。物理的な意味でも!」
何それ怖い。というか、やっぱり知り合いですかそうですか。類友の典型なのか、それともそういう人達に影響されたのかは分からないけど。どっちにしても、碌でもない人から酷評される時点で、駄目人間なのが予想出来るんだけど。
「フェン君、怒らないので今思った事を正直に言ってくれますかー?大丈夫ですよー、いくら私でもいきなり氷漬けにはしませんからー」
・・・青筋立てて笑われても、全然信用出来ない。最近では、そこそこ強力な心理防御を施しているからか、あっさり胸のうちを暴かれる事は無い。多分、大体読んだ上での台詞なんだけど。
頭の上から大量の石礫が降って、お仕置きは終わった。障壁で防げたのは、大体半分位。結構痛かった・・・。
「生意気というか、図太くなってきましたねー。どうしてこうなったんでしょうー?」
言わない。師匠に似たんだよ、とは口が裂けても言わない。
「ハッロー、黒ちゃん。なかなか連れて来てくれないから、こっちから来たわよー」
何の気配も見せないまま、一人の女性が転移してきた。何か、何処かで見たような・・・?
「帰ってくださいー。この家は色情狂と売女は立入禁止なのですよー」
周辺が切り取られたように、空気が薄くなった。多分これが伝説の断空結界で、師匠が持つ本来の最高防御。一体誰なんだろう?
「釣れないわねー。エリクシル、完成したんでしょう?薬師の元祖としては、どんな出来栄えか見てみたいんだけれど」
「あなたが見る間でもなく、完璧な仕上がりなのです。多少の粗はありますが、万能薬を名乗るだけの性能はきっちりと───」
「ほざくな、小娘。いいから見せろ、そう言っているのだけれど?」
結界の内部にいるはずなのに、空気が冷たくなった気がした。いや、実際に冷たくなっているんだ。よく見てみると、結界に僅かな綻びが生まれてきていた。
「これね?アイワ草なんて希少な植物、良く見つけたわね。そこの君、あなたがフェン君かしら。アイダート岩の粉末を混ぜたようだけれど、それは何故?」
「アイワ草の持つ微小な毒性を中和させる為、です。無視する事も出来る程度でしたが、実際にやってみたら上手く馴染まなかったので。相性の良い中和剤を幾つか試しましたが、満足出来たのはそれだけでした」
一目、文字通りに一瞥しただけで僕の使った素材を全て言い当てられてしまった。アイダート岩を使ったなんて、師匠も言い当ててこなかったのに。まさか、さっき薬師の元祖と言っていたけど、この人が・・・?
「当代のレシピとしては、辛うじて及第点かしらね。カスラ草とか雪中花とか、他の融和性の高い素材を見落としているようだし。」