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第十七話 前進、成長、飛躍(大幅 ※当社比)

間違えた・・・

 今なら師匠が作ったエリクシルも、完全に鑑定出来るかもしれない。そう思ってモノクルを手に取った。そして見えた。ある意味、見えなかったと言うべきか?師匠のそれには魔力が全く含まれていなくて、僕のには結構豊富に含まれている、という事が。素材は少し違っていたものの、効能自体はほぼ似通っていた為か、互換品という使い方が出来たんだと推測した。

 疑問なのは、魔力の有無だ。何故師匠のには魔力が無く、僕のにはあるのか。それを気にしないような人は、絶対薬師と認めないし、認めたくない。子供が遊んでて、偶然出来ちゃった、という物でもないんだし。


 ここで更に疑問が浮かんでくる。そもそも、魔力とは何なのか、という話だ。師匠は以前、魔力は生命力に紐付いていると言っていた。つまり、全ての生物は魔力を生まれながらに持っている、と言える。植物や岩石といった無生物は例外で、自然界の魔力を取り込み、年月をかけて変異した物が薬草や毒草、装備品の素材として使われているようだ。いや、薬草とそこらの雑草を拡大して見比べたら、全く違いが無かったんだ。試しにポーションを作った後の搾り滓を見てみたら、一部の雑草と完全に同じ物だったし。


 そこまでの仮定を元に、ポーションから魔力を抜き出す方法を考える。とにかく考えて、試していく。思いついた方法を試して、失敗したらまた素材採取と調合・実験を繰り返していたら、二年が過ぎていた。

「出来た・・・」

 鑑定結果、エリクシル。僕の鑑定はもちろん、モノクルでの鑑定結果でも嘘偽り虚偽記載、おまけに誤字脱字の無い本物だ。何処かの国が出すインチキ新聞とは違うのだよ!

 ・・・思考が逸れた。やっと出来た。当たり前だけど、今までで一番苦労した。結局成功した方法が、一番単純で簡単な方法だった、っていうのは何かの皮肉だろうか?

「あー、とうとう出来ましたかー。ちょっとそれ、渡してもらっていいです?」

 不意に現れた師匠が、引っ手繰るようにポーション瓶を取っていった。いや、褒めてほしいとか、そういう訳じゃないけど。何かこう、もうちょっと言葉があってもいいんじゃないかな、と思うわけで。

「いくつか質問させてもらいますねー?この調合ですが、何故こういったレシピになったのでしょう?」

「アプリ草について調べた時、素材の組み合わせと加工次第で効果が変わる、という事が分かったので。色々と試作を繰り返したら、セイレーンの涙と水月草が相性の良い素材だったんです。低級ポーションを下地にする、というのが納得できない事でしたけど」

 結局一番の根っこは、作るのが簡単な低級ポーションにある。そこに素材を足したり引いたり、終いには素材の薬効から一つだけを抜き出して、というのもあったっけ。

「魔力精製はどうやりましたかー?直接吸い出す、なんて事は言いませんよね」

「一瞬、それも考えましたけどね。僕の技術じゃ純粋な魔力を単独で扱うのは難しいので、諦めました。子供でも思い付く、簡単な方法に行き着きまして」

 直接自力で吸い出せないなら、消費させればいいという、とても単純な話だ。思い付いた時には、ポーションに対して魔法を使っていた。正確には瓶の下に描いた魔法陣に向けて、だけど。

 僕が描いた魔法陣は、空気を洗浄するという単純な物だ。大気中の埃や余分なモノ全てを浄化する、とても基本的な魔法。発動時に少し魔力を消費したけれど、後の維持はポーションから吸い取った魔力を使用した。大気中の魔力を使うって研究が、まさかこんな時に役立つなんて・・・。

「合格ですー。三年でここまで出来るようになるなんて、想像していませんでしたよー?約束通り、これで製薬技術については免許皆伝です。明日からは魔導工学の続きといきますよー」

 ・・・はい?え、ここはお祝いで何日か休みになって、それから次に、って流れじゃないの?ちょっと待った、いやホント。待ってほしい待ってほしい。あ、駄目だ。師匠の目が怪しい色になってる。あれはろくでもない事を考えてる目だ・・・。

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