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第十四話 意外すぎる程の事実

「まずは太陽草から、っと」

 集めた素材を並べ、順番に鑑定していく。まだ明るい内に鑑定しないと、太陽草の薬効が抜けてしまうからだ。加工まで済ませなければ、劣化は避けられない。そうなると、自ずと順番は決まってくる。

「だよね・・・。太陽草に毒素があるなんて、考えるだけ無駄だったな」

 結果は昔教えられた通り、解毒作用のある成分以外は見当たらなかった。コルワ草の方も言わずもがな。そもそも、薬草として一般的に広まっているものだ。磨り潰した葉を傷口に付けるだけでも、掠り傷位なら治せるような物品だ。これに何かあったら、下手すると人類は絶滅してもおかしくない。という事は、あるとすれば・・・。

 アプリ草については、じっくりと調べるなんて誰もしていないはずだ。どんな文献を漁っても、低難度の薬品材料としか書かれていない。高度の専門書となれば、その存在すら触れていない位だ。その事実は一旦、忘れ去るとして。

「え、嘘だろ・・・?」

 鑑定結果は、真っ黒。生のアプリ草から、大量の毒素が検出された。実には栄養価すら見当たらないものの、一切の加工をしない草からは、幼い子供なら死に至る程の毒が含まれている。それも、無作為に採取した全ての個体から。個体差こそあるけれど、どれも似たり寄ったりの数値だ。対して、加工し乾燥させた物からはその毒が消えている。揮発性の毒じゃないから、何らかの要因があるんだろうけれど。


 一抱えのアプリ草を持って、家に帰った。師匠が声をかけてきたけれど、今は相手をしている場合じゃない。真っ直ぐに地下の研究室へと駆け込み、実験へと移る。なんとなく頭に浮かんだ仮説、これを証明する為に。今なら、師匠の実験大好きな気持ちが理解出来る。こんな気持ちになったら、自分の考えが正しいかどうか、確かめなきゃ治まらないだろう?

 実験の結果、アプリ草は特定の魔力と反応する事で毒を別の物質へと作り変える、そんな効能を持つ事が分かった。これがあるからこそ、あのレシピで解毒薬が作れる、という事だ。こんなの、普通は調べるような事じゃない。何故この材料が解毒薬に?なんて疑問、殆どの薬師は考えないような事だからだ。最初にこれを作った人は考えたんだろうけれど、その事が後世に残らなければ意味は無い。考えてみれば、どうしてこうなる、なんて事を思った覚えがないな・・・。教わった事だから、本にこう書いてあるから、と完全に無視していた事柄だ。

 そんな程度の認識で賢者の称号なんて、得られる訳がない。もしかして師匠は、これを見越して僕にあんな課題とヒントを?それ以外に考えられる要素も無いしね・・・。


 さて、これでどう変わるのか、といえば。すぐにこう、という物は無い。今まで足したり引いたりした素材に、同じような効力のある物があるんじゃ、という足掛かりが出来ただけだ。こういった組み合わせを片っ端から試して、なんて時間は無い。だとすれば、どういった手段が考えられるだろうか?今はとにかく、試す時間が欲しい・・・。

「ありますよー?こっちでの一時間を、二十時間まで引き伸ばす方法なら、ですが。今のフェン君なら、習得まで半年位ですねー」

 悪魔の囁きが聞こえる。耳を傾けたら駄目だ、その瞬間に地獄の二丁目に突入するんだから。

「簡単に言えば、亜空間とこちら側で時間の流れが違う事を利用するのですよー。亜空間内部は時間という概念が無いのですが、それを術者が制御するのです。無限の時間なんて、人類が耐えられるはずがありませんからー」

 無視しても、勝手に解説された。つまり教え込む気満々という訳ですか、そうですか・・・。

「それ程難しい理論でもないのですよ?私達が使うある一般的な魔法を、空間を対象として扱うだけなのですー。フェン君なら、一ヶ月位で形にはなるはずなのですよー。自由に扱うまでで半年、という所ですね」

 どうします?なんて聞いているけど、選択肢が無いも同然だ。断ろうとすれば、い───の時点で魔法が飛んでくる。頷いたら今度は地獄の窯が開く。あ、詰んだ・・・。

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