第十三話 懐かしい場所へ
この辺から、若干長めにする予定。
思っていたより長編になってしまったので。
素材集めは、決して順調とは言えない。そもそもの話、何をどう使用するかさえ分からず、闇雲に探している状況だ。地図もコンパスも無しに旅をしている、と言えば分かりやすいかな?
師匠から貰ったモノクルが、一番心強い存在だ。僕の知識に無い素材でも、粗方の効力は示してくれる。ハイポーションに素材を足したり引いたりと試してみても、結果はてんでバラバラ。もっと簡素なポーションに素材を幾つか足して無作為に他の物を抜いたら、何故かハイポーションより効果が高い物が出来たり、逆に毒薬になったり。正直お手上げだ。というか、なんのヒントも無しに作れるとは思えない。
「こっちは低級ポーションを基にしましたね。これは・・・上級でしょうか?発想としては正解に近いんですが、ちょっと横に逸れてますねー。三十点ですー」
帰宅する度に採点してもらうけど、五十点さえ出ない。何かこう、喉元まで来ているんだけど、口まで来ないという感じのもどかしさを覚える。
「では、一つだけ。解毒薬を作る時、フェン君は何を使いますか?その材料を全て、詳細に鑑定してみるといいのですー。そのモノクルがあれば、私の言いたい事は分かるはずですよー」
そう言われて真っ先に向かったのは、小さい頃に遊び場としていた森だった。凶暴な魔獣がいない、穏やかな森林。素材としての価値は余り無いものの、低級の解毒薬や回復薬を作るには丁度いい、そういった薬草が自生している場所だ。
「確か、この辺りだったんだけど・・・」
当時の事は、最近になってはっきりと思い出せるようになっていた。薬草の群生地があって、そこで父さんや母さんと一緒に遊びながら、採取の基本を教わっていたんだ。
「あった、ここだ」
暫く歩くと、急に視界が開けてきた。森を抜けた草原、そこが探していた場所だ。モノクルをかざすと多様な素材の名称が、視界に投影されていく。あとは僕の知識と経験が、師匠からのヒントを解く鍵だ。
簡易な解毒薬の材料は、考えなくても集められる。太陽草とコルワ草の茎、そしてアプリ草だ。茎は生ではなく乾燥させた物を使い、可能な限り水分を飛ばすと効果は高くなる。最大限に乾燥させると、自然毒なら大抵は無効化出来るんだとか。
太陽草はその名の通りに、太陽が出ている時間しか採取が出来ない。暗くなると萎れてしまい、薬効成分が完全に消えてしまうのだ。そのせいで明るい内に採取から加工までを確実に行わなければ、全て駄目になってしまう代物となっている。
その真逆で、アプリ草は夜の方が探しやすい。若干の発光性を持つ実を付けている為、暗くなってからの方が初心者は見つけやすいからなんだけど。それでも、特徴さえ覚えてしまえばそんなのは関係ない。父さんからその辺りのコツを教えてもらったんだっけ・・・?