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第十二話 地獄。まずは一丁目。

今までと比べると、若干長いです

 死の行軍という言葉がある。かつて何処ぞの軍隊が、数倍の国力を持つ国に対して行った、無謀な強行奇襲を評価した言葉だ。結果?そんなの、言わずとも知れている。どれだけ緻密な作戦があってそれを忠実に再現したとしても、一頭の牛が十頭の虎に勝てる訳がない。国力差でさえ、それ程の隔たりがあったのだから。今でもこの言葉は残っていて、無茶な挑戦に対する揶揄として使われている。

 何故こんな話をしたかって?それ位に無謀な事を、僕はやらされていたからだ。朝は夜明けと一緒に起きて、掃除と朝食作り。朝暗い時間しか採れない素材を採取して、太陽が地平線から出てきたら師匠を起こして、一緒に食事。そこからまた素材採取をしたら、ユニコーンの世話に行く。このユニコーンは最近この森に住み始めた個体で、かなり良質な毛皮を持っている。野生の割に、誰かに飼われていたんじゃ?と疑う位には。清廉な女性にしか懐かないというのは無くて、僕にもあっさり従うようになってくれた。まあ、時々反抗してくるんだけど。特に、餌が気に入らない時は。どうやら僕の事は、時間通りにご飯をくれる人、と認識しているらしい。初対面の時に擦り寄って来たのは、そういう空気を出していたのだとか、なんとか。(師匠談。モンスターと対話する魔法があるらしい)

「フェン君のご飯は美味しいですからねー。調理が出来ない種にとっては、神様に等しい存在なのですよー」

 ・・・知りたくなかった、そんな事実。

 話が逸れた。ユニコーンの世話が終わったら、やっと僕の修行の時間になる。この時点で太陽は大分高く昇っていて、昼ご飯まであと少し、という頃合なんだけど。

 今は空間転移の術式を教えてもらっている。これが出来るようになれば、当面は雑用から開放される。代わりに、終わりの見えない旅が待っているんだけど。


「フェン君、製薬だけは一人前になってきましたねー。元々、上級のポーションを作れていたのですし、当たり前なんですが・・・。そろそろエリクシル、挑戦してみますか?」

 地獄の蓋が開いたのは、この言葉に頷いたせいだ。本当に、どうして頷いたんだろう・・・?まさか素材集めからする事になるなんて、思ってもいなかったんだろうな。

「実はですねー、エリクシルに関しては定型化したレシピが存在しないのですよー。私が作ったやつだと、もう絶滅した種の薬草もありまして。なのでフェン君には、まずレシピを作る事から始めてもらいますー。因みにこれが、先月私が作ったエリクシルです。ちゃんと今、大陸の何処かで採取出来る物だけで作っているのですよー」

 確かに鑑定結果でも、【エリクシル 完成品】と表示される。素材は鑑定不能で、製法も該当無しと出た。つまり、僕の知らない作り方だという事だ。

「今のフェン君なら、素材さえ集められれば作れる物のはずなのですー。期限は特に設けません、完成させたら製薬に関しては免許皆伝なのですよー」

 って、夢中で鑑定していたら、何やら恐ろしい事を聞き流していた。材料の選定からしろって、どんな無茶振りだろう?僕の知識にある薬は全て、体系化された物ばかりだ。材料の品質や状態から若干手を加える事で、精度を上げる事も出来るようになったけれど、結局は教えられたレシピを利用している事に変わりはない。

「異論は認めませんよー。旅の途中でも、ここへ戻る事は許します。分からない事、知らない素材について教える事も可能ですー。というか、戻って来なかったら泣きますよー?フェン君のご飯が、私の生きがいなんですからね?」

 ・・・既に決定事項だったらしい。しかし、安い生きがいもあったものだ。あれ?戻って来るにしても、どうやって?ここを拠点にしていたら、いつまでも大陸の反対側へは行けないような・・・。

「という訳で、フェン君には空間転移の魔法を覚えてもらいますー。門系列も良いのですが、あれは燃費が悪いので魔法陣設置型にしますー。以前渡した、転送魔法陣は覚えていますか?」

 ああ、いつだったかの買い出しで使った、常識外れの物品ね・・・。え、まさかあれを覚えろと?

「行き先をイメージして、陣を発動させるだけですからねー。フェン君の魔力量でも起動させやすいですし、何より便利な魔法なのですよ。まずは、覚えている限りで描いてみてくださいー」

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