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食べちゃイヤ!  作者: 紫陽 圭
3/17

4月に再会

**********


 ふわふわふわ……トットットットッ……ふわふわふわ……トットットットッ……


 ふわふわふわ……トットットットッ……ふわふわふわ……トットッ───ビクゥッ───


 あれから約1カ月、町の中を歩いていて、覚えのある姿を見掛けて体が固まる。



「あ! あの時の……って逃げるなよ?! 何もしないから!」

「……。」


 相変わらず大きくて真っ黒で声低くて……怖い。

怖くて、またしても体が動かず声も出ない、前はなんとか逃げられたのに!

また会うなんて、それも声を掛けられるなんて、予想してなかったもの!

なんで、わざわざ声を掛けてくるの~? 私、何かした?



「あの時は驚かせてすまなかった。 俺もいまだにワケわからなくって釈明さえ出来ないけど、そこまで露骨に怯えられると傷つく。」


 あ、耳と尻尾がヘタった……と気付いたら少し怖さが減った。

それでも、まだ怖いけど、ホントに困惑してるっぽい表情だし、ちょっとだけ様子を見ようと思ったの。

そしたら、何かを考える前にポロリと言葉がこぼれた。


「何もしないって言ったって、狼(族)だし……。 食べられちゃうのはイヤだもの!」


 あれ? なんか口調がおかしいかも? うーん。

そういえば、前の時は狼(族)さんの耳の様子とか気付く余裕なんて無かったし?!

ちょびっとぐらいは狼(族)さんに慣れたのかも?!



「ホントに何もしないから! ……というか、お前、変わった? 見た目とか、動きとか、なんか匂いも変……。」

「変?! 臭いっていうの?!」

「いや! 違う! 前と違うような気がしただけ!」


 咄嗟とっさに叫んでた、怖かったはずなのに。

だって、私だって女の子だもん! 匂いが変って傷つくよね? ホントだとしても失礼だよね?

ってことで思わず叫んだら訂正されたけど、『前と違う』って……あ、そうか、狼(族)だもんね、嗅覚はすごく良いんだ。



「……見た目って、髪型? さっき切ってきたところなの。 で、動きって、今日が今年最初だったから、あの量を切って軽くなったことだし、足取りも軽くなってるかも……ってのがそうかしら?!」

「前は腰まで有ったよな?! それが肩までになれば、そりゃ大分軽くなるだろ。 髪の動きも軽くなってるし、な。」

「じゃぁ、匂いっていうのは?」

「……うーん?! あぁ! 髪を切ったときか何かに薬剤か何か使ってないか?! 多分、それだと思うぞ!?」

「あぁ、そういうことなのね。」


 見た目と違って女性の変化に気付くのね、とか思いながら訊いてみる。

 そしたら、見た目通りに女性の事情(美容)に疎いことまで自ら明かしてくれちゃった。

『髪を切ったときか何かに』って美容の手順を知らないのね?!

『薬剤』ってシャンプーやブローの時のだと思うの。

 全部、深く考えずに無意識みたいに話してるんだろうけど、なんか、変な人!



「……それにしても、柔らかそうだな───」

「柔らかそう?」

「あ、今も柔らかそうなのは変わらないぞ?」

「今も?」

「……?」

「……。」


 なんか、いつのまにか普通にしゃべってるなぁ、とか思ってたら、不穏な言葉が出てきたかも?!

ピクリと反応し自然に体が固くなる……けど、固まってる場合じゃない!

自分に気合を入れて、なんとか逃げだした。



「食べられちゃうのはイヤぁーーーーーーっ」

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