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食べちゃイヤ!  作者: 紫陽 圭
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3月に出会って

 獣人と獣は居るけど人間は居ない世界での、、『ほんわか系に少しコメディ風味』な獣人の恋物語(?)を男女両方の視点から。

主人公は女の子(雌)だけど、彼女の性格の都合で心理描写は男性サイドが多かったり(笑)。

**********


 もこもこもこ……トテトテトテトテ……もこもこもこ……トテトテトテトテ……



「おい! そこの!」


 もこもこもこ……トテト───右(キョロ)左(キョロ)右(キョロ)───テトテ……もこもこもこ……トテトテトテトテ……


 町の中を歩いていて後ろから声を掛けられた気がしたけれど、声に聞き覚えが無かったの。

そして周りにはたくさんの獣人が居るから呼ばれたのは自分じゃないと思ったの。

だから、そのまま歩いてたら、また後ろから同じ声がした。


「そこの、もこもこ水色羊!」


今は3月、たいていの羊族は”もこもこ”の毛なんだけど、『水色羊』って聞こえたのよね。

色々な毛色の羊族がいる中で、私の毛の水色は自慢の特別にきれいな水色なんだもの。

周りに似た毛色の羊族が居なかったから、私のことかな、とは思ったけどね。

ぶっきらぼうで不機嫌っぽい低い声が怖くって……。

それに、なんとなく、振り向かない方がいいかも、って気がして……。



 もこもこもこ……トテト───右(キョロ)左(キョロ)右(キョロ)……そろーり─── っっっ!!!


でも、無視するのも怖かったから、そろーりと振り向いたら……悲鳴さえ凍っちゃった。

だって、そこにいたのは大きな大きな黒い狼(族)だったもの!


「見つけた! お前を俺によこせ!」

「っっ?!」


 こわい! 怖い!! コワいーっ!!!

それしか考えられなくて、そのせいか足も身体も動かなくって……。

なんとか口を動かしても声は出なくって……音にさえならずに空気だけが口から出る。

だって、その身体の大きさと、声の迫力と……何よりも狼族なんだもの!

それに……なんか変なコト聞こえた?



「どうした? ……驚きすぎたか。 まぁ、いい。 お前、俺に食われろ。」

「……っ?」


 こわい! 怖い!! コワ───??????

怖いのは変わらないけれど、また、変なコト聞こえたような……? でも声は出ないけど。



「お前は俺のものだ、だから食わせろ。」

「……ぃやぁーーーーーーっ」


 なぜか今度は体が動いて、声というか悲鳴も出て……逃げ出した。

『よこせ』? 『食われろ』? 『食わせろ』? 狼に?! 狼族って羊族を食べるの?




「……ぃやぁーーーーーーっ」

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