依頼
【2218/03/13 16:38】
「……馬鹿馬鹿しい」
所々を機械化した少女は、吐き捨てるように言った。
「そこを何とか。貴方がいなければ、我々アリア国軍に勝ち目はありません」
軍服を着た男たちが、頭を下げながらそう言ってるのを見て、少女は溜息を吐く。
「対価が見合ってないのと、私が勝手に戦略の一部に組み込まれてるのが気に食わない。私は殺し屋であって軍人じゃない」
「分かっております。……しかし、今度の戦争ではおそらく魔法貴族が出てくるでしょう。その前に国王を暗殺し、一気に攻め込まなければなりません」
「魔法貴族、ねぇ」
少女の目つきが変わる。殺気を含んだそれは、百戦錬磨の軍人ですら震え上がらせるほどのものだった。
「報酬をもう少し上げてくれ。あともう一人仲間を雇う」
「分かりました。それで、お願いします」
男たちは敬礼をすると、そそくさと部屋から出ていった。
数秒ほどして、部屋の奥にあるクローゼットが開く。中から出てきたのは、武装した男だった。
「面倒な依頼だが、なかなか刺激的だ。俺は構わないぜ」
手に持ったハンドガンを懐に仕舞った男は、笑みを浮かべた。
「どうせケイのことだから、もう作戦は練ったんでしょ?」
「当然だ。この依頼を引き受けなくても、俺が一人でやるつもりだったからな」
「相変わらずね」
「……依頼料を受け取ったら早速向かうぞ。ルートは南側の山脈からだ。頂上にクロスの国境警備隊がいるが、そいつらは殲滅する。そこで軍用トラックを拝借して山下り、あとは城が見える位置まで移動するだけだ」
「狙撃するの?」
「今回は相手が相手だ。狙撃が一番楽だろう」
ケイと呼ばれた男は、頭の中で練った作戦の概要を軽く説明し終えると、部屋の奥にあるドアを開けた。
「アリス、何かいいものは無いか?」
「そうね、奥の方に対物ライフルがあるはずだわ」
アリスと呼ばれた少女は、機械化された左腕を展開する。机の引き出しから拳銃用の弾を取り出すと、展開した腕に現れた隙間に詰め込み、腕を元に戻す。
そうしているうちに、奥の部屋からケイの身長と大して変わらない大きさの銃が運び出された。
「これか?見たことない銃だな。まさか試作品を貰ってきたのか?」
「そのまさか。XUM18、弾は専用の14.5mm弾で、射程は3.7km」
「そこまで射程が伸びるってことは、弾道補正機能付きか」
「そう。だから弾のコストが高いんだけど、今回の報酬で何とかなりそうだわ。一応普通の徹甲弾もあるから、それも持っていきましょう」
「分かった。これは俺が運ぶか。後は護身用のアサルトライフルとバックアップ用のハンドガンだな。お前は何にする?」
まるで飲食店でメニューを見ているような感覚で、銃を選んでいく。アリスは数秒ほど考えた末に「同じもの」と答えた。