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お題SS  作者: 湯城木肌
41/41

頑張ってくれ天気予報

#創作スタンプラリー企画


お題:「空を見上げる」「飲み込む」「ゴミを捨てる」「傘をさす」を順番に

「お先に失礼しまーす」

「宮野ちゃん傘は?」

「降ってます?」


 出入り口越しに空を見上げる。出勤時は灰色で止まっていた空模様も、今では黒々とした雨雲に満ちていた。土砂降りではないけれど、濡れながら帰るのは気が進まない。

「天気予報は曇りだったのに」

 責任転嫁の言葉が口をつく。信じていたのに。頑張ってくれ天気予報。

「あくまで予報だもの。売り上げに貢献してくれても全然かまわないわよ」


 強面店長が出入り口横を一瞥する。つられて視線を飛ばした先には、折りたたみ傘とビニール傘が準備はまだかと待機していた。

 頭を振り、出たばかりのバックヤードを指さす。

「バックで雨宿りしてても?」

「いいわよ。代わりといえばなんなんだけど、ついでに発注しといてくれる?」


 思わず出そうになった拒否の言葉を飲み込み、明るく返してバックヤードに戻る。発注の仕事を断って傘購入のプレッシャーが増すことは避けたかった。同じ過ちを繰り返したおかげで、既に家の傘立てはビニール傘コレクション置き場の様相を呈してきているのだ。

「よいしょ」

 鞄を長机に下ろし、発注用デバイスを手元に寄せる。雨宿りの時間つぶしにはちょうど良い。予報では曇りだったから、この雨も三十分経たないうちにやむだろう。


発注項目が新商品の枠にさしかかったところで、バイトの先輩がバックヤードに顔を出した。

「宮野くん、申し訳ないんだけど外のゴミまとめてきてくれるかい?」

「わかりました。やっておきます」

「ありがとう。助かるよ」

 スマホで時計を確認すると、発注作業を開始してから三十分経過していた。外の様子を探るのに丁度良いタイミングだ。発注用デバイスの代わりにビニール袋を手にして外へ出る。


「うわ」

 天候を見て愕然とする。雨は止むどころかいっそう勢いを増しているようにさえ思えた。本当に曇りの予報だったのか天気予報。

 止まない雨に落ち込みながらも、慣れた作業の手は止まらない。ゴミ箱いっぱいにたまっていた燃えるゴミだけまとめ、店裏のゴミ処理スペースへ持って行き、放り込む。淡々と作業を進めてると、雨も淡々と降り続け、止まないんじゃないかとさえ思えてきた。


 ゴミ捨ての報告をして、バックヤードに戻る。すぐさま携帯電話を取りだし、天気予報を確認した。画面には雨マークが3つ並んでいる。つまり、これから3時間は雨だと予報していた。

「嘘じゃん」

 いつの間にやら予報が変わっていたらしい。天気予報の馬鹿。変わったなら変わったって言ってほしい。


「発注終わった?」

 店長がバックヤードに顔を出す。強面をより強める笑みを湛えている。

「まだです」

「そ。終わったら言ってね」

 その言葉は、発注作業が終わったら次の仕事が待ってるからという意図を含んでいるように聞こえた。このまま雨宿りし続けたらどうなるだろう。もしかして、ここから3時間雨が止むまでタダ働きをさせられるんじゃないか。それなら傘立てにコレクションを1つ追加したほうがましだ。


 鞄を背負い、店の出入り口横からビニール傘を持ってレジに向かう。

「あら、帰るの?」

「はい。発注はお菓子のところまでやっといたんで、あとよろしくお願いします」

「そう、気をつけて」

「お先に失礼しまーす」

 外に出て、早速新品の傘を差す。まだ空は曇っているけど、晴れやかな気分だ。


「あれ?」

 幾分か歩いたところで、周りに違和感を覚える。傘を差していない人間がぽつりぽつりと目につくのだ。恐る恐る空を見上げると、黒々とした雲は変わらないが、先ほどまで降っていた雨がピタリと止んでいるのがわかった。帰り始めてから五分も経っていないというのに、だ。

 あの雨が降ると言っていた天気予報は何だったんだ。頑張れ天気予報。この傘を無駄にしないでくれ。

 その後、家に帰り着くまでの間、差した傘が雨音を鳴らすことはなかった。


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