40/41
『名も知らぬ相手に送る手紙』
#Twitter300字ss
お題:書く
「相手は名も中身も知らぬ奴なんだ、適当に書きゃいいだろ」
まっさらな紙と対峙して唸る詩織に声をかける。一服しに休憩室に戻ったのに、隅で唸り続けられては落ち着かない。
「駄目です。これは言わば、恋文の代筆なんですから」
彼女の足下に視線を落とす。試行錯誤の跡が無造作に散らばっていた。
「どこでつまってんだ」
「いやあ、タイトル以上にこの作品に合う言葉がなくて困ってるんですよ」
弱気な言葉とは裏腹に、普段の接客でも見せない満面の笑みが返ってきた。
それで定時過ぎても残業代は出ないからなと言い添え、店に戻る。
時代小説は好みじゃないが、たまには手に取ってみるのも悪くなさそうだ。




