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お題SS  作者: 湯城木肌
30/41

僕のことを少年と呼ぶお姉さん

勝手に拝借

【お題】

「僕のことを少年と呼ぶお姉さん」


 見慣れた天井を、布団の中で何もすることなく見上げる。地元に帰ってきてすぐに体調を崩すとは思わなかった。暑い。意識がもうろうとしている。汗を拭きたい。

 縁側からの風が風鈴を鳴らし、涼しさを届けてくれる。幾分か気分が楽になる。

 あのお姉さんが初めて、僕の前に現れたのも今日のような暑い日だったような。


「少年」

 声が聞こえた。昔聞いたあの声だ。

 幻聴でもお姉さんの声がもう一度聞けるのなら、こんな体調も悪くない。

「少年、久しぶりだね」

 僕の頬に冷たい何かが振れる。顔を少し傾けると、そこにはほほ笑むお姉さんがいた。


「っ、ぁ」

「無理に動くな。寝てなさい」

 優しく頬が撫でられる。心地よさとくすぐったさの両方が僕の中をめぐる。

「私はどこにも逃げないさ」

 頬を撫でていた手を滑らせ、僕の頭を撫でてきた。

「少年、見ない間に大きくなったね」


 当然さ、そう言いたいが喉はうまく動かない。

 昔は少年と呼ばれ続けずっと相手にされなかったけれど、上京して僕は大きく成長したのだ。今でも少年と呼ばれるのは不本意だ。

「少年はいくつになっても可愛いらしいね」

 薄くなった髪を撫でられながら言われてもいい気はしない。

「少年は変わらず少年だなあ」


 こんなしわくちゃのじいさんになっても?

 心の中でお姉さんに問いかける。


「不服かい? 少年が齢をとって大人になっても、私も齢をとっているんだから。少年はいつまでたっても私を追い抜くことはできないの」

 何だそれ。強引なところは相も変わらずお姉さんのままだ。

「少年呼ばわりされたくなかったら、私より先に生まれてくるべきだったね」

「ぃ、ぁっ」

 そうだね、そうだよ。そんな風に僕を振り回してくる、そんなお姉さんが僕は昔から――。


「疲れたろう。お姉さんらしく私が子守歌でも歌ってあげよう」

 風鈴の音と重なったきれいな歌声が僕の中を巡っていく。僕の意識がだんだんと遠のいていく。



「おやすみ、少年」


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