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漆黒の闇
深い深い闇の中
耳鳴りを呼ぶ静寂
静かな眠りの中で
遥か遠く
それでも確かに、
耳に届く
何かに導かれるように、ゆっくりと目を開けると、そこに広がるのはいつもの景色。
しかし体をなぞる風は刺すように冷たく。風に乗って舞い散るは紅に染まる椛の葉。初めて見る紅の葉は艶やかで、美しく。足もとに届いたそれを拾い上げた。その途端、“今”を理解し、一筋の涙が静かに頬をつたう。
「どう、し……て……?」
幾度となく見つめた椛を仰ぎ見て、そこに広がるのは紅葉した椛たち。
そして、こちらに背を向け椛を眺めるその人は、夢に見たあの愛しい姿。恋焦がれたあの人は、今はもう、すぐそこに。