つるけも
つるんとしていて、固そうで、それでいて触れば柔らかいのではないかと思わせる。
私の彼。
口づけを交わせば、鱗の表面がヒヤリと柔らかく。
その中に潜む舌は長く伸びて、こちらにも絡みついてくる。
「くすぐったい。そうなで回してくれるな」
口づけに合わせて、私のしっぽがつい彼を撫でてしまうのは、もう癖のようなもの。
「つれない貴方が構ってくれたんだもの。
」嬉しくてと声が弾む。
「私の子猫さんは可愛いことを言う」
「もう子猫はやめて! 立派な大人なの」と、拗ねれば、彼は「だからこうして君を愛でているんだよ」と、私を甘やかす。
黒い鱗の手触りは極上でたまらない。
たまに縦の瞳を瞼が隠す。彼もまた私の毛並みの触り心地を気に入ってくれているようだ。
「次はいつ帰ってくる?」
旅に出れば長く帰ってこない彼。
しっぽを彼に絡ませ問う。
「そうだなぁ。……もう少しで私の繁殖期が来ると思う。だから、しばらくは旅には出ないよ。今年は君の繁殖期が少しだけ重なりそうなのだが、どうかな?」
全身の毛が逆立つかと思うほどの快感が触られてもいないのに走った。
「本当に? 本当に?」
繁殖期に一緒に居られる……の?
「泣くほど嫌か?」
彼が不安そうに涙を拭ってくれる。
嬉しくて嬉しくて、ハラハラと流れる涙が止まらない。
「嬉しいの」
彼の手を頬に当てる。
「嬉しくて死んでしまいそう」
それから、彼の手を肩に誘導して懐に潜り込む。彼は私を抱え込み、安堵の息をついた。
「私の寿命も残りは君の寿命と変わらないくらいになった。子どもは種族違いで出来にくいかもしれない。けれど、残りの命を君とともに過ごしたいと言っても良いだろうか」
心臓が痛いくらいに嬉しさで高鳴り、目が眩みそうなくらいに世界が眩く愛しい。
「もちろん。貴方以外に私の番は居ないし、貴方が今まで一人だったのは、貴方に私以外の番が居なかったからよ」
つるんした黒い鱗の胸に頬を擦り付けると、彼が頭を撫でてくれる。
「かもしれないな」
「かもじゃなくて、そうなの!」
「ミルティ。私を選んでくれてありがとう。愛しているよ」
心がふわふわする。
目が熱くなる。
どうしよう。
涙が出ちゃう。
「ディ、ディバイン~。好きぃー」
「本当に可愛い子猫さんだ」
長い舌で涙をペロリと拭われた。
***
「見事にミルティの面影しかないな」
「異種族婚の子どもは母が基本でどこかしら父の能力が移るはずでしょ?」
ディバインが生まれたての子どもを抱き上げた。
ふわふわの茶色い毛玉はニパっと笑い父に手を伸ばす。
「ミルティ……どうしたらいいんだ?」
「何が?」
「可愛い過ぎて嫁にやれん!」
ミルティの軽やかな笑い声が空に広がる。
照れて視線をミルティからはずしたディバインを見て更にミルティはお腹を抱えて笑うのだった。
ディバインの声は石塚運○さんでお願いします。