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秋桜 -ZERO-   作者: 七地
8/10

梨桜がカウンセリングに通い始めて、

不眠が少しずつ改善されて、食欲も出てきた。


そんな休日に梨桜を抱いた。



溜まっていた物を吐き出すだけの行為。

そう思っていたが、相手が惚れた女だと何もかも違う。


梨桜と肌を重ねる。

それだけで満たされている自分に驚いた。



「ねぇ…」


オレの髪を指で梳きながら、戸惑いがちに聞いてきた。


「どうした?」


目の前にある白くて細い手首…

ふいに札幌で、前の男に強く握られて痣ができたことを思い出した。


「後悔、してない?」


後悔?

躊躇いがちに言って目を伏せている。


「私、自分でも面倒な女だなって思う」


前に、宮野が言っていた事が頭に浮かんだ。


『いつか、梨桜が引き摺っているモノがおまえにとって重荷になるかもしれない』


――怪我の後遺症を抱えている身体だから――


――トラウマを克服するために診療内科に通っているから――


この双子は揃って同じような事を言う。

お前は、オレの女として愛されていればいいのに



でも、……そうだな


「後悔なら、してる」


ビクッと震えて、オレの髪に触れていた手を引こうとしたけれど、手首を掴んで唇で触れた。

あの時、赤くなった痕を消した場所にもう一度、朱い印をつけた。


後悔しているのは、二年前の自分自身に…


「ごめんね…」


涙声になった梨桜の頭ごと抱き締めた。


「あのとき、すぐに手を離さなければ良かった…」


自分の名前を伝えて、繋がりを持てば良かった。

そうすれば、あんな男に先を越されることもなかったし、梨桜が辛いときに傍にいられた。


「あのときって?」


「二年前の夏休み」


思い出せないのか、オレの腕の中から顔を上げてオレを見ている。


「花火大会の日に迷子になっただろ?」


「うん、男の子に助けてもらった。…どうして寛貴が知ってるの?」


助けられたことは覚えてるのに…

コイツ、本当に分からないんだな


「オレ…」


ため息交じりに伝えれば、オレの肩に手を置いて身を乗り出そうとしていた。


「え?」


「おまえを三浦が待ってる店に連れていったのはオレ」


「えー!?」


ハッキリと伝えれば、ガバッと起き上がりオレを見ている。

そんなに驚くような事か?


それにしても…オレの顔の横に手をついて「え?寛貴なの?」と一人で軽くパニックになっている。


自分が今どんな格好か忘れてるだろ…


「いい眺めだな、梨桜?」


唇が触れそうな位置にあった形の良い胸に、フッと息を吹きかけると


「ダメ!」


手で胸を隠してシーツの中に潜ってしまった。

何がダメなんだよ…オレのモノだって言ってんだろーが?


「ホントに…あの、優しい爽やか少年が寛貴なの?」


顔だけを外に出して上目遣いに聞いてくる。


…煽ってんのか?


でも、その前になんかムカつくな…


「オレじゃ不味いのかよ?」


「違うよ…ただ、また会えたらなって思ってたから。それに…」


へぇ?同じ事考えてたって訳か。


「…それに?」


「内緒」


そう言うと、モゾモゾとシーツの中に潜り込もうとしている。

…やっぱりムカつくな。


「梨桜、覚悟しろ?」


お仕置きだ、お前が恥ずかしいことをしてやる。


「なんで!?」


シーツを剥ぎ取り、梨桜を組み敷いた。


「ヤッ…ダメ!」


啼け。


お前はオレだけに啼かされろ。



.


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