プロローグ
初夏 新千歳空港
東京からの修学旅行生が出発ロビーに集まっていた
「可愛い子いなかったな~」
「おまえはそればっかりだな…」
集団から少し離れたところに男子生徒が二人立っていた。
二人とも整った顔立ちをしており、身長も他の生徒たちよりは高かった
集団の中にいる女子生徒がチラチラと彼等を見ており、目が合うと一人は手を振り、もう1人は呆れた顔でその様を見ていた。
「拓弥、見ていて恥ずかしい」
「オレ、女の子はみんなお友達だから。そんなことよりオレは女に興味のない寛貴の方が心配」
「ほっとけ。うるさいのは嫌いだ」
先程から女子生徒に手を振っている拓弥と呼ばれた男子生徒は、少し目元が下がっており優しそうな雰囲気を醸し出していた。
その彼を呆れながら見ている寛貴と呼ばれた男子生徒は少し長めな前髪に形の良い目が隠れていた。
『11時のフライトだよ?無理しないで』
少し離れたところから少女の声が聞こえた。
『1人で行けるから大丈夫。約束を優先して?』
自然と耳に入ってくる少女の声は軽やかで心地良かった。
(11時のフライトならオレ達と同じ便だ)そんなことを寛貴が思っていると
「可愛い声だな、どんな子だ?」
「拓弥、ここでナンパとかやめろよ?」
『やだっ!そういう事は早く言ってよ!急いで買うから、じゃあねっ』
少女は、元気良く言いぱたぱたと土産物屋に向かって走っていった。
「顔見たかったな…」
寛貴の中で少女の声が耳に残った。
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