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プロローグ

 それは近くて遠い昔の話。けれども、不安で揺れていたあの緑玉の如き双眸を、私は今でも鮮明に思い出すことができる。



「……ずっと、俺の傍にいろ」


 何を今更、と思った。出会ったその日から、四年前のあの日から、私は貴方の傍にいると決めていたのだから。貴方が離れろと言わない限り、私はこの場所を離れるつもりはない。けれど――


「時間を、ください」


 見上げる瞳に悲しさの翳が落ちた。12歳になったばかりの彼はまだ背が低く、今も私に目線を合わせようと必死で背伸びをしていた。その姿は――彼は不本意と言うだろうけど――、とても可愛らしく抱きしめたい衝動に駆られた。


「何の?」


 私は膝を折り、彼を見上げる姿勢を取った。


「私が貴方の傍に、貴方の隣にいて相応しい人間になれる時間を」

「お前は、お前のままで良いんだ!俺はありのままのお前が……っ」

「ありがとうございます。でも、私がそうしたいのです」


 これは私の我儘。彼の傍にいるなら、それに相応しい人間になりたい。自信を持って彼の傍らにいたい。だから――


「お願い致します、レイヤード王太子殿下」


 そう言って、臣下の礼を取った。


「……俺がお前の頼みは断れないって、わかって言ってるな」

「はい、殿下」


 それはもう、幼馴染ですから。

 顔を上げて微笑むと、レイが怒ったような、それでいて困ったような顔をした。


「……わかった。但し――」


――絶対俺の元に帰って来い。



 そう約束して七年が経った。そして今、私はその約束を果たすためにここにいる――。

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