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ある日の朝
目覚ましが鳴った。
止めた。
もう一回鳴った。
これはたぶん、私への警告だと思う。
時計は7時45分。
家を出るのは8時5分。
走れば間に合う。
でも走ると目立つ。
「これは失敗じゃない。ズレただけ。」
洗面所で顔を洗いながら、昨日の夜を思い出す。
小説を一節だけ読むつもりが、気づいたら空が少し白んでいた。
夜の私は、正しいことを軽く扱う天才だ。
制服に袖を通しながら、また時計を見る。
7時58分。
この時間帯の私は、基本的に被害者。
玄関で靴を履くとき、なぜか急に冷静になる。
未来の私は、いつも過大評価されてる。
そう思いながらも、
今日の私は、昨日より少しだけ早く家を出た。
ドアを閉める直前、
ポケットの中でスマホが鳴った。
アラームじゃない。
「……知ってる。
でもまあ、なんとかなるでしょ」
そう言って、琴音は歩き出す。
走らない程度の速さで。




