外の世界
風斗がドアを開け真っ先に身を乗り出した。
それに続いて僕も外に出た。
外は真っ暗だった。
「現実世界と時間軸は同じなのか?」
風斗が呟く。
公園から出発して山に登り、こっちの世界に来るまでどれぐらい時間がかかっただろうか。
正確にはわからないが体感2〜3時間だろうか。
山に登っている時でさえ少し暗かったんだ。
無理もない。
「今の時間がわかるものある?」
風斗に聞いてみた。
「俺腕時計つけてきたんだけど、壊れてるみたいだ。」
風斗の腕時計を見てみたが時計の針がずっとくるくる回っている。
しかも異常な速さで。
「とりあえず現実の世界で集合した緑公園に行こう」
「そうだな。」
確か緑公園には時計が一つあった気がする。
時計が正常に機能しているかどうかは怪しいが、何か手がかりは見つかるかもしれない。
早速僕たちは緑公園へと歩みを進めた。
僕の家から緑公園までの距離は大体歩いて5分程度。
すぐに着く距離だ。
歩いていて感じたが、やっぱり人はいないようだ。
僕の感じる時間帯が当たっているとするならば、まだまだ人は活動しているはず。
しかし全然人の気配を感じない。
しっかり電灯はついているが、人の家で電気がついているところはまだみていない。
そうするとやはり僕の家に電気がついていたのはおかしいのではないだろうか。
「綾人。流石におかしくないか?」
「僕も思った。」
薄々感付いてはいたが、虫、動物の声が一切聞こえない。
聞こえるのは地面を擦る靴の音だけ。
「なあ。やっぱ俺思うんだ。なんで綾人の家だけ電気がついていたのかってな」
自分でもわかっていたがやはり怖さが来る。
「もしかしたらそういうことなのかもしれない。」
少し声が震えながらも言葉を返す。
「俺たち以外のやつがこの世界にはいるってことだな。しかもそいつは綾人の家に入っている可能性が高い。」
考えたくなかったが、何度考えてもやはりそこに行き着いてしまう。
僕たち以外にも誰かいる。
そしてそいつは僕の家に出入りしているということだ。
色々な可能性を考えているうちにもう緑公園についた。
「綾人。かけっこしようぜ。」
何を言い出すかと思えばかけっこなんて。
「別にいいけどなんで?」
「この位置から時計を見ようと思っても見れないからな。だからあのベンチまで走って時計を一緒に見るんだ。」
風斗のいう通りここから時計を見ようとしても見えるのは時計の形だけ。
だが少し歩けばいいだけの話。
なぜ30mぐらい先のベンチまでかけっこするのか。
「じゃあ俺がスタートって言ったらスタートな。」
「わかったよ」
普通にやった場合僕に勝ち目はない。
運動能力は完全に風斗の方が上だ。
だが風斗にはハンデがある。
水を8Lも持ってきているのである。
公園へ行く途中に少しは消費したが、せいぜい1Lぐらいだろう。
つまり7Lぐらいの水とプラスでぺっぽもいる。
そのハンデを背負っている風斗に勝ち目はないと思いたいが、それでも負けるような気がしないこともない。
対して僕の運動能力は平均より少し上ぐらいだろうか。
学年順位で言うと、157人中、47位。
まあそこそこって感じの能力だ。
僕は短距離があまり得意ではないので少し怪しい。
「じゃあ行くぞ!」
二人で準備の体制をとる。
もちろんクラウチングスタートだ。
「よーい!」
なぜだろうか。
いつも走る時より心臓がバクバクしている。
「スタート!」
僕たちは一斉に走り出した。
初速は風斗の方が上。
だが流石に重りのハンデがあるせいか減速していく。
対して僕は、あまり早くはないが重りがない分風斗に差をつけることができる。
このままいけば流石に僕の勝ちは確定している。
久しぶりに風斗への勝利。
ハンデがあるので素直に喜んでいいのかどうかはわからないが、勝利は勝利なので喜ばせてもらう。
そんなことを考えながら勝利を確信していたが15m地点で風斗から声がしてきた。
「ちょっと暴れんなって。ぺっぽ!」
そんな声だった。
どうやらリュックの中でぺっぽが暴れているようだ。
まあどんな理由があろうと負けは負け、勝ちは勝ちなのである。
そしてゴール目前まで迫った時、隣から弾丸のように何かが飛んできた。
「ぺっぽ!」
視界が茶色い毛で埋め尽くされる。
僕は倒れた。
「ワン!ワン!」
気づけば僕はゴール直前でぺっぽに顔を踏まれてギリギリ風斗に負けた。
ゴールした風斗がこちらへ寄ってくる。
「おいぺっぽ。やめろって。」
そう言ってぺっぽを無理やり引き剥がしてくれた。
「ごめんな。綾人が勝ってただろうに。」
「いや僕の負けだ。どんな理由があろうと負けは負け。」
この考えを持っているのは僕である。
だから曲げるわけにはいかない。
「綾人はやっぱいいやつだな。」
そう言われると照れる。
人に褒められるのはやはり嬉しい。
「負けは負け。」
恥ずかしさのせいか同じ言葉を繰り返し発してしまった。
そこから僕たちはベンチに座り時計をみるのだった。




